不動産の固定資産税評価額や実際の販売価格を左右する大きな要素として、物件の向き(接道の方向)・接道の数・幅員等があります。
南半球の日本ではご存じの通り、賃貸でも売買でも「南向き」は人気で、広告でもセールスポイントと大々的に打ち出されていますよね。
具体的に、土地の向きや接道関係によって不動産の価値がどのように評価されるかについて解説していきます。
■向きと接道数による評価の順位
道路が接道している数と物件の向きに着目し、北向き接道をゼロとすると、評価の得点はだいたい下図のようになっています。
※1.ポイントの振り分けは査定業者や地域によっても変わります。なお単位は%ではなく、あくまでも順位付けの為に振ってあります。
※2.区分マンションでは敷地の接道数は評価を左右しません。
方位の評価
一般的に、向きは南→東→西→北の順番に評価が高く、接道数が多いほど評価が高いです。
南向きは言わずもがな、陽当たりが良い可能性が高いので一番人気です。
東と西とでは、朝日が入り西日を避けられる東向きの方が評価が高く、北向きは陽が当たりづらいため一番評価が低くなっています。
ただ実際には南向きだから無条件に陽当たりがよく、北向きだから陽当たりが悪いかと言われるとそうとは限りません。
例えば北向きの土地でも南北に長い敷地であれば、北側斜線制限を受けづらいことを利用して建物を北側(道路側)に寄せることで、南側に広い空間ができ、まるで南向きかのような陽当たりを確保することができるようになります。
陽当たりや建築のしやすさは土地の形状や周辺建物の配置などによって大きな個体差があるため、方位だけで一概に物件の優劣をつけることはできませんが、それでも方位が物件評価に与える影響は大きいです。
接道の数
接道の数は、玄関や勝手口の配置の自由度、採光や通風性に影響することから、単一接道よりも複数接道の方が評価が高く、角地では角地緩和を使えることや建物が見栄えすることから、南北・東西の二面接道より角地の方が評価が高くなります。
また向きによっては接道数が多いことで斜線制限の影響を受けづらくなるため、建物の天井高が確保しやすかったり屋根が削られていないスクエアな外観の建物を建築しやすくなるというメリットもあります。
4方全てに道路がある四方角地は、評価自体は高いですが、セキュリティやプライバシーの観点から敬遠されることもあるため、必ずしも人気が高いとは限りません。
▼斜線制限や角地緩和についてはこちらの記事をご覧ください▼
方位の振れ
右側の図は方位が45度振れている(傾いてる)土地の場合です。
北向きの土地が45度振れると、東か西の要素が出てくるため、加点されてゼロではなくなります。
同様に東や西の土地が45度振れると、北か南の要素が出てくるので減点(北)か加点(南)になり、
南向きの土地が45度振れると真南ではなくなり東か西の要素が出るために減点になる、という具合です。
実際問題、方位の振れている土地は建築時の斜線制限が2方向から入ってきて屋根の形がイビツになりやすかったりするので、建築の観点では方位ができるだけ真っすぐになっている土地の方が良いとされています。
■高層マンションの南向きは不人気?
タワーマンションなど、周囲に日照を遮るような建物がなく、室内にハイサッシを多用した物件は、陽当たりが良すぎて夏場は室内が灼熱になるという居住者の声を聞くことは少なくありません。
紫外線カットフィルムなどである程度対策はできても、やはり夏は暑くてカーテンを閉めているというのはもはや”あるある”です。
そのため最近では、分譲価格は南・東・西・北の順番に高くなっていても、南向き住戸が避けられて割安な北向き住戸が先に売れるということもしばしば起こります。
また高層マンションでは眺望が大きな売りになるため、例えば何も見えない南向き住戸と東京タワーが見える北向き住戸とでは、北向きの住戸の方がプレミアがついて人気なこともあります。
■実際、方位で査定価格はどれだけ変わるか
実際の査定では、駅距離、環境、周辺施設、道路幅員、など様々な要素で加点・減点した総合評価によって評価を算出していきます。
向き以外同条件の土地の場合、例えば北向きの土地が坪単価100万円だったとすると、
西向きは10%上乗せして坪単価110万円程度、
東向きは10~15%上乗せして坪単価115万円程度、
南向きは15~20%上乗せして坪単価120万円程度、
東南角地であれば25~30%上乗せし坪単価125~130万円
というのが相場感かと思います。
ただし地域性や土地の規模・形状によって大きく変わる部分なのでだいたいの目安としてとらえてください。
コメント