”古地図を見たらこの辺りは昔田んぼだったから地盤が弱いんじゃないか”
という声を耳にすることがあります。
購入する前に現地の地理や歴史を調べることは、安全面を確認したり納得感を得るのに役に立ちますが、
昔の地図をあまり気にし過ぎるのも考え物です。
今でこそいたるところに住宅が建っていますが、市街化が一気に進んだのはここ100年ほどのことで、それ以前は都心部の本当に真ん中の地域以外では、家よりも田畑の方が多く存在していました。
今では閑静な住宅街として高い人気を誇る東京都世田谷区も、「新町住宅」という名前で初めて住宅地として開発・分譲されたのは大正元年のこと。
サザエさん宅がある場所としても知られている桜新町駅近くの新町3丁目という住所です。
その分譲が完成する昭和15年(1940年)前後の航空写真を見ても、更地や畑のようになっている場所がほとんどです。
もともと田畑だったから地盤が心配だと言っていたらどこにも住めなくなってしまいます。
軟弱地盤のエリアは存在するのか
結論からいうと、地盤調査で軟弱と判断される土地が多い地域というのは存在します。
やはり河川沿いや盛り土でできた場所、埋め立て地などはどうしても地盤改良に費用がかかりやすい傾向があります。
ただ、地盤の良し悪しに地域性はあっても、家を建てようとするその土地の地盤の良し悪しは、実際に地盤調査をしないと誰にも分かりません。
お隣が地盤改良しなかったから自分の土地も必要ないだろうというのは全くアテにならず、逆にお隣が地盤改良に大金がかかったけど自分の土地は表層改良だけで済んだ、なんてことは当たり前にありますし、なんなら建てる建物の構造、大きさ(重さ)、配置、ハウスメーカーによっても地盤改良の程度は変わります。
※重いRC住宅や木造3階建て住宅は接地面積当たりの荷重が大きいため、ほぼほぼ柱状改良が必要になります。
なので地域性で安心し過ぎてはいけませんし、心配し過ぎてもいけません。
どうしても不安なのであれば、購入前に売主さんに相談をして、実費で地盤調査を依頼してみるのも良いかもしれません。
売主さんからすると自分の敷地に穴をあけられるということ以外にも、調査の結果軟弱とされることで、売却活動に支障が出る可能性もあるため、承諾してくれることは少ないかもしれませんが、購入前提でどうしてもということであれば許可を出してもらえることがあるかもしれません。(私は過去にありました)
土地の歴史を調べる価値はある
しかしながら古地図などから歴史を調べる価値はあります。
田畑を気にしていたら…とは言いましたが、昔河川が流れていたり、低湿地になっていた場所は、他の場所と比べて水が出やすかったり地盤が弱い可能性はあります。
また、都内にはもともと刑務所や処刑場だった場所もいくつかあり、調べれば調べるほど心理的な抵抗を感じる可能性もあります。(物件はその分安くなってはいますが)
時代をさかのぼればいたる所で人が亡くなっているでしょうし、今建っているマンションやビルでも、工事中に人が亡くなったり告知事項にならない共用部で人が亡くなっているケースもそれなりにあるため、全部を気にしていられないのが本音ですが、長く住む予定ならなおさら、土地の歴史や地理を勉強してみるのも良いのではないでしょうか?
古地図はここで調べる
国土地理院のウェブサービスでは江戸や明治に作成させれた地図を閲覧できる「古地図コレクション」や、1928年頃以降の航空写真を現代の地図と重ねて表示できる「地理院地図」などのサービスが提供されています。
また地域の区市町村立図書館では、過去のゼンリン地図や100年以上前の古地図を閲覧したり、備え付けのコピー機でコピーすることができるようになっている場合もあります。
地図記号で畑や果樹園などが表示されていることもあり、国土地理院のものよりも分かりやすいかもしれません。
不動産調査でも稀に使うことがありますが、興味があれば足を運んでみてはいかがでしょうか?
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