ローンシミュレーションなどを使って年収から借入可能予想額を出したことがあっても、実際の審査では勤続年数や勤務形態などのいわゆる「属性」によって借入額が減額されてしまうことがあります。
希望額に少し足くて買えない…
知らなければ諦めてそこで試合終了かもしれませんが、
解決できるかもしれない方法があります。
それが、変動金利と固定金利とミックスです。
仲介業者でも、ある程度経験を積んだ営業マンでないと知らなかったりすることなので、購入者になる人も知っておいた方がよい内容です。
■金利のミックスとは
住宅ローンは全額変動金利のみ、固定金利のみ、ではありません。
4,000万円借りるとして、半分は変動、もう半分は固定、という具合に、任意の割合で金利プランをミックスさせることができます。
■なぜミックスにすると借入額可能額が上がるか
まず、住宅ローンの事前審査は何も言わなければ『変動金利』を前提に審査されます。
借入可能額の計算には、銀行が独自に定めた「返済比率」と「審査金利」という数値が使われます。
「借入希望額を審査金利で借りた場合の年間返済額」と「年収」の割合が既定の返済比率(35~40%が多い)以下であれば審査が通る、といった具合です。
この審査金利がポイントです。
変動金利で審査する場合の審査金利は、金利優遇前の店頭表示金利(2.475%)よりも少し高く、2.7%~2.9%程度で設定されていることが多いです。
これは、ある程度金利が上昇したとしても貸し倒れが起こらないようにするための、銀行の安全策とも言えるでしょう。
一方、固定金利での審査はどうかというと、金利が固定されていて上昇することがないため
審査金利=実際に適用される実効金利or店頭表示金利になります。
参考までに、三井住友銀行の35年固定の店頭表示金利は年2.49%(2022年8月現在)と、
変動金利の審査金利よりも低いことが分かります。
フラット35の場合はさらに低く、実効金利1.530%(2022年8月現在)がそのまま審査金利になります。
つまりいずれにしても、長期固定金利のほうが返済比率の計算上、同じ年収でも借入可能額が多くなるという現象が起こります。
このことを利用して、借入額の一部を固定金利にして、変動と固定のミックスで再計算してもらうことで、借入可能総額が数百万円単位で上昇することがあります。(実際に何件も経験しています)
・銀行は自分から言ってくれないことも
不動産仲介業ではお客様の代わりに銀行担当者とやりとりしますが、
何度か取引している銀行担当者だと、黙っていても
「このお客さんちょっと届かないかもしれないんですけど、固定金利を混ぜちゃうと返済厳しそうですかね?」
などと向こうから投げかけてくれて、資金計画を作り直してお客様に相談できたりします。
そういう親切な銀行担当者だと審査結果が出る前に打診をしてくれたりしますが、多くの場合はこちらから申し出ないと言ってくれないため、知らずに諦めた人も少なくないのではないでしょうか。
■こんな人におすすめ
ミックスで借入可能額は増えますが、長期固定金利は変動金利よりも高いため、固定金利のミックス割合によっては返済額が大幅に上がる可能性があります。
そのため
「実際には十分な返済能力があるにも関わらず、転職間もなかったり、経営者や自営業者などで信用レベルが一般的な会社員よりも低く見られてしまったことが原因で借入額が伸びなかった人」にとっては検討の価値があるのではないでしょうか。
実際に借入希望額の何割を固定金利にすれば購入可能な借入額まで伸びるかは、個別の状況次第なのでなんとも言えません。
「7割固定金利にしてくれ」などと言われたらさすがに「それならフラット35の方がお得だよ」となりそうですが、もしも全体の1割2割を固定金利にすることで借入額がクリアできるのであれば、
前述の通り固定金利部分だけの繰り上げ返済も可能なため、最初の数年間だけ頑張って固定金利部分を先に完済してしまう、という戦略も十分に取れると思います。
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