不動産の査定や調査で欠かせない登記簿謄本(現在の正式名称は履歴事項全部証明書。慣例的には謄本と呼びます)
これには土地が分割や合筆された歴史や、建物の新築年月日、過去の所有者の情報や借入、差し押さえの有無など、多くの情報が載っています。
契約段階で初めて目にする方も多い謄本ですが、中身はちょっと複雑で分かりづらくなっています。
一般的な売買では理解する必要のない箇所も多いですが、読み方が分かると物件の変遷が見えてなかなか面白いので、
今回は謄本の調べ方、見るポイントを解説します。
謄本は誰でも取れる?
住民票などは本人か委任された代理人しか取得できませんが、登記簿謄本は法務局窓口、郵送、オンライン申請、ウェブ閲覧などの方法で誰でも取得可能です。
物件の住所から地番を調べて、申請用紙に地番、家屋番号、閲覧目的を書き、申請費用分の収入印紙を買うだけです。
(空き地を見つけてはどんな状況になっているのか趣味で調べている方もいます)
物件の地番が分からない場合は、管轄法務局に電話で聞くか、法務局に備え付けの地番検索の端末を利用すれば、地図や住所から探すことができます。
謄本の見るべきポイント
とあるマンションの一室(区分所有という)の謄本をもとに解説します。
謄本は、土地と建物に分かれています。
所有者の住所変更や抵当権の抹消など、現時点で有効でなくなった部分は削除されず、下線が引かれています。
建物謄本
①専有部分の家屋番号
一棟の建物内で区分登記されている部屋の家屋番号が全て記載されています。
101~108(号室)など。
②所在・建物の名称
建物の所在(地番)と建物名称(マンション名)が記載されています。
ちなみに建物の所在は~丁目~番地~、土地の所在は~丁目~番~、と書く決まりです。
③床面積
建物の各階の延べ床面積が記載させています。
重要事項説明書の「一棟の建物の表示」部分の床面積は、この数字を全階足した数字が記載されています。
④敷地権の表示
建物が建っている土地(敷地権として登記されている土地)の地番と面積が書かれています。
敷地権とは、昭和59年1月1日の「不動産登記法」改正によりできた制度です。
区分所有マンションの場合、マンションが建っている土地を、部屋の床面積により按分された持ち分だけ所有することになります。
一戸建てのように土地の所有権と建物の所有権とを別々に管理していると、理屈上は土地の持ち分だけ他人に売るなど土地と建物の分割処分が可能になってしまい、マンション全体の権利関係が非常に複雑になる恐れがあります。
マンションの運営や将来の建て替え協議などで大きな問題になることから、家屋と土地の持ち分とをセットにして所有する敷地権という考え方が導入され、土地と建物の所有権が分割処分されないようになりました。
法改正以前に建ったマンションでは敷地権の設定がされていないことが多いですが、その場合は管理規約に敷地と建物の分割処分の禁止が記載されていることがほとんどです。
⑤専有部分の建物の表示
調査対象の区分登記建物(マンションの一室)の情報が書かれています。
建物の名称には号室が書かれています。
ここに書いてある床面積は登記床面積というもので、住宅ローン控除や登録免許税の軽減などの平米要件は、この床面積を参照します。
⑥敷地権の表示
対象住戸の土地の持ち分が書かれています。
管理規約にも同様の持ち分が記載されています。
⑦所有権者の名前と所有することになった原因
いつ、どうして、どこの誰が所有者として登記されたかが書かれています。
初回の登記は所有権の保存登記、2回目以降は所有権の移転登記になります。
所有者が変わっても情報は削除されず、次の段落に次の所有者が追加されていきます。
そのため現在で何人目のオーナーなのかを知ることができます。
⑧最新の所有権者=売主の情報
売主の名前と住所が記載されています。
引っ越しても住所変更登記の義務はないので、必ずしも現住所と登記されている住所が一致しないこともあります。(次回の所有権移転時には売主の責任で正しい住所を登記する必要があります)
⑨抵当権設定部分
過去の所有者がこの物件を担保に住宅ローンなどの借り入れをしていた場合は、当時の借り入れ額と内容、債権者(銀行など)の情報が記載されます。
差し押さえが発生した際には「差押え」と書かれます。
この例では根抵当権の仮登記がされていましたが、所有権の移転に伴い登記の抹消がされていることが分かります。
⑩現在の抵当権設定状況
現在の所有者が住宅ローンなどの借り入れをしている場合は、ここに借入額、債務者、債権者が書かれています。
書かれていない or 抹消されている場合は、そもそも借入を起こしていない or 既に完済して抹消したということを意味します。
借入から間もなく、売買代金が借入額を下回っているようなら、残高証明や預貯金などを確認して、残債の完済(=抵当権の抹消)ができる状況なのか確認する必要があります。
土地謄本
①土地の所在
土地の地番が書かれています。
②土地の面積
一番下の部分が最新の敷地面積です。
それ以前の面積は合筆(合体)や分筆(分割)などにより面積が違っているので、下線で取り消しされています。
右側の「原因及びその日付」という部分には、~番の土地と~番の土地が合筆された、~番と~番の土地に分筆されたなど、現在の土地ができあがった経緯が書かれています。
③敷地権の設定部分
マンションの区分所有者全員で敷地の全部を共有する、という内容の敷地権が設定されていて、右側にはマンションの所在と名前が書かれています。
※敷地権制度以前に建てられたマンションでは、この権利部に持ち分を持っている区分所有者の情報がズラーっと記載されています。
※1 錯誤
申請者や法務局側のミスで誤った情報が登記されていた場合は、錯誤という形で正しい情報への更正登記がされます。
この例では地積が間違っていたようで地積更正登記がされています。
閉鎖謄本
土地の合筆などで消滅した地番、焼失などで亡くなった家屋番号などは、閉鎖された登記簿として、土地登記簿で50年間、建物登記簿で30年間保存されています。
突き詰めて土地の歴史を調べたい場合は、謄本の申請方法と同様に、閉鎖謄本の申請をすることで閲覧ができます。
まとめ
謄本の内容のほとんどは、仲介業者がいれば売主や買主が理解していなくても問題ない部分ですが、読めるようになると物件への理解が深まり面白い部分でもあります。
売買を機に、いろいろと調べてみてもいいかもしれませんよ。
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