不動産の売買仲介を行っていると、しばしばサブリース付のオーナーチェンジ物件をお預かりすることがありますが、
契約内容を全く知らずにサブリース契約を結んでしまっているオーナー様が多いことに驚きます。
サブリースを有効に活用すれば、管理の手間をなくしつつ賃貸収入の安定化を図れますが、サブリース契約の内容が問題視されることが少なくなく、また売却時においてもサブリース契約が障害になることが少なからずあります。
この記事を読むと以下のことが分かります。
■サブリース契約の仕組み
サブリース事業とは、入居者から受け取る賃料とオーナーへの保証賃料の差額で収益を上げる転貸事業です。
(実際には入退去に係る細かな部分でも収益を上げています)
サブリース事業にはマスターリース契約とサブリース契約がありますが、これらを総称してサブリースと呼ばれることが多いです。
サブリース事業者はオーナーと、転貸を前提とする賃貸借契約(マスターリース契約)を結び、相場よりも割安に設定された保証賃料を支払うことで新たに貸主としての立場になり、
一方では自らを貸主として入居者を募集・賃貸借契約(サブリース)を結び入居者から家賃を受け取ります。
オーナーはマスターリース契約を締結することで、通常の相場賃料よりも受け取れる賃料が安くなるデメリットがある一方で、
入居者の生活トラブルへの対応や入退去に関わる諸手続き等を事業者に一任することができ、
かつ物件が空室でも関係なく保証された賃料が受け取ることで賃貸経営の安定化を目指すことができます。
●サブリース業者≠不動産業者
売買賃貸の仲介や買取再販事業を業として行う場合は宅建免許が必須ですが、事業者自らが貸主となって募集や賃貸借契約を行うサブリース事業では、
原則宅建免許が不要です。
不動産業者でなくてもサブリース事業を行うことは可能ということです。
素人とまでは言いませんが、本業として仲介業などの不動産業を行っていない業者との契約トラブルも耳にするので、いずれにしても契約書は契約前に必ず読み込むようにしましょう。
■サブリース契約を巡るトラブル
・解約ができない
以前から社会問題になっている一番大きなトラブルです。
マスターリース契約にも解約のルールが設定されていますが、中には解約条項がなく「オーナー側に解約する合理的な理由がある場合のみ解約できる」という解釈になる契約も存在しています。
サブリース事業者は貸主になると同時に、オーナーから家を借りている借主でもあります。
日本の民法では、借主の権利が非常に強く設定されており、貸主側が契約を解除して退去してほしくても民法による借主保護を盾に解約をさせてもらえないケースがあるのです。
サブリース事業者が保護すべき立場に該当するかは甚だ疑問ですが、現状ではこれを防ぐ法律は存在せず、どうしても解約をしたい場合は裁判にまで発展することもあります。
2021年に、マスターリース契約を結ぶ際にサブリース事業者による重要事項説明の義務が発生するようになりましたが、
・多額の解約違約金がかかる
「賃料の~ヶ月分の違約金」などを支払うことでマスターリース契約を解除することができるという解除条件になっていることもあります。
保証家賃が10万円だとしても解除に数十万、一棟まるまる契約をしている場合では数百万円の解除料が発生する可能性があり、解除したいのにできないという事態に陥る可能性もゼロではありません。
・保証家賃が下がる
一言に家賃保証と言っても、大きく分けると2種類の契約形態があります。
ひとつは募集賃料に変動があったり空室になっても保証賃料が一定の「賃料固定型(空室保証型)」
もうひとつは空室保証がない代わりに、実際に貸し出せた賃料によって受け取れる賃料が増減する「実績連動型」です。
いずれにしても気を付けないといけないのが、
「経済状況の変動などが起きた場合には、保証家賃の増減を可能とする」
「築年数の経過等により募集賃料が不適切になった場合は、保証家賃を増減する可能性がある」
などの文言が入っている場合です。
国内の経済状況はさておき、建物は毎年古くなりますし、古くなれば募集賃料も下げざるをえなくなるので、基本的に保証家賃は下がる一方だと考えるのが自然です。
家賃保証と聞くとオーナーは「家賃がずっと変わらない」と都合がよく受け取ってしまう可能性があるので、最近では誇大広告に当たるとして補足説明の記載がされるようになっています。
■サブリースが付いていると売りづらい?
基本的にサブリース契約をしている物件では、相場よりも若干安めの賃料でマスターリース契約をすることになるので、投資用物件で最も大切と言っても過言ではない「利回り」が低くなります。
また、買主によっては、既に他の不動産を管理してもらっている管理会社に管理を一任したかったり、もしくは自主管理によって実質利回りを上げたかったりするので、
基本的にサブリース契約の引き続きが必要な物件は敬遠されることがほとんどです。
不動産業者による買取についても、サブリース付の物件はNGだったり、通常の買取額よりも安くなるのが普通です。
そのため、サブリース契約の解除をさせてもらえない内容で契約を結んでしまっている物件は、
買い手が付きにくいだけでなく、売却額が残債額を下回る債務超過状態になってしまい売るに売れない、という状況に陥ることもあります。
マスターリース契約の解除ができるケースでは、契約解除により利回りが改善された状態で売却活動を始めたり、解除ができることをアピールして売却活動をするなどの工夫が有効です。
いずれにしても不動産投資は出口戦略も重要なので、サブリースを利用するか否かは慎重に判断するようにしましょう。
■最後に
サブリース業界には悪質な業者もまだまだ多く、まともに契約内容の説明もせずに、なし崩し的に契約させていることも一定数あると思いますが、契約書をよく読んでおきさえすれば、不利な契約はある程度避けることもできるはずです。
分からないことがあれば周りに相談することもできるはずです。
不動産という高価な資産を預ける大切な決断です。
相手方のコンプライアンス意識をアテにするのではなく、契約ごとは必ず理解をしてからサインするようにしましょう。
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