住宅ローンを貸す貸さないの審査は銀行がしていると思われがちですが、実は銀行自体がリスクを負う”プロパーローン”を除いて、通常は銀行の”保証会社”が審査をしています。
保証会社は万が一貸したお金が返ってこなくなった場合に、債務者に代わって銀行に返済を行う立場で、賃貸を借りるときに加入する保証会社と同じイメージです。
ローンの窓口でやり取りをする銀行の担当者は、融資の実績が自分の実績になるため「この人のローンを通してください!」と保証会社に対してプレゼンする立場だったりします。
ではこの保証会社が融資の審査をするときに、借入と年収のバランス以外の要件で、何を懸念材料としてどう判断するかをご紹介していきます。
該当する方は、早い段階で不動産屋さんに事前に相談して付き合いのある銀行に探りを入れてもらうなど、事前に対策を練ることをオススメします。
■該当していたら要注意な条件
・借入時の年齢が45歳以上
住宅ローンは最長で80歳までに完済することが条件になっています。
そのため46歳で借りようとすると返済期間は最長でも34年になり、35年ローンと比べて毎月の返済額が高くなったり借入可能額が減ったりします。
「まだ43歳だからゆっくり考えよう」というのは少し危険で、いざ探し始めても条件に合う物件が1年2年見つからない、なんてことはザラです。
また土地から新築となると、仮に明日土地を契約したとしても完成は約1年後=融資実行日も1年後ですから、より時間に余裕を持ちたいところです。
最終的な買う買わないは別として、検討開始は早いに越したことはないでしょう。
・勤続3年未満
今の勤め先で3年間勤続していることが審査の基本条件です。(本審査時に3年勤続していればOKという場合も多いです)
ただしこれはあくまで基本で、勤務先が上場企業や信用のある有名企業などの場合、銀行によっては勤続3か月~半年程度でも問題なくローン審査を通してくれたりします。
※某メガバンクで、上場企業に転職して1か月のお客様のローンを満額で通してもらったこともあります。
とは言え一般的に勤続年数は非常に大切な要素で、勤続年数不足で取り扱えない銀行が出てくることは事実なので、転職間もない方や転職予定の方は、銀行や不動産会社に事前に相談しておくことをオススメします。
・経営者、取締役等の役員、自営業
業績が本人の収入を大きく左右する経営者や自営業者は、一般会社員と比較して信用力が圧倒的に弱く見られます。
役員でも取締役クラスになると会社と一蓮托生という扱いになるので、本人の直近3年分の確定申告書のみならず、会社の決算報告書を提出しないといけなことも多く、直近3期分が連続黒字もしくは連続増益になっていないと減額や否決になる場合があります。
また、基本的に頭金(諸費用とは別)を物件価格の2割以上用意する必要が出てくるなど、審査条件が厳しいのが現状です。
ただし同じ社長職でも、代表権のあるオーナー社長ではなく、代表権のない雇われ社長の場合は、オーナー社長ほどは厳しく見られない傾向にあります。
・同族経営の会社の社員
例えば親の会社の社員等です。
これも前項と同じく、会社の業績に生活自体が大きく左右される上に一般社員でありながら実質的な経営者層になっているケースも多いことから、銀行から突っ込まれることが多くなります。
苗字が違っているなど、書類上は繋がりが見えないからバレない、なんてことは実際あるにはあるのですが、もし隠して融資を受けたあとにバレたりすると最悪の場合「今すぐ一括で返済してください」なんてことになるリスクもあるため絶対にオススメしませんし、少なくともご自身の主導で動くことは絶対にやめてください。
・副業で赤字申告をしている
会社員としての収入に単純にプラスされている分には問題ありませんが、不動産投資などの副業で節税のために赤字にしている場合は、本業の年収から赤字分マイナスされた年収をもとに計算されるため、借入可能額が大きく下がることがあります。
その状態での借入額が希望の物件を探せる予算に達しない場合は、赤字資産を売却したり1年2年かけて赤字申告部分を圧縮して確定申告をするなどの下準備が必要になる場合があります。
軽い気持ちで始める人も多い不動産投資ですが、将来的にマイホーム購入を検討している場合はよく考えて始めることが大切です。
・既存の借入がある
既存の借入はありますか?と聞かれて、カーローンはすぐに思い浮かぶと思いますが、意外に忘れられがちなのが、
- 奨学金
- スマホ本体の分割払い
- クレジットカードの複数回分割払いやリボ払い
- 黒字経営だけど借入している不動産
しかも、
「年収から計算すると5,000万円が借り入れ上限だけど車のローンが500万円残っているから4,500万円までしか借りられないのか~」ではありません。
カーローンなどの金利は住宅ローンよりもずっと高く設定されているため、月々の総返済額ベースで返済能力を審査する住宅ローンでは、車の500万円の残債のせいで住宅ローンが1,000万円以上減額されるなんてことは当たり前にあります。
また、借入をして購入した黒字経営ができている収益不動産を持っている場合、本業の収入に黒字分を足せますが、同時に借入額も足すことになるので、残債がもう残り僅かか利回りが相当良くない限り、大きくマイナスに作用することがほとんどです。
自己資金に余裕があるなら、住宅ローンの審査時に、預金で既存借り入れを完済できることを銀行に伝えておき、必要なタイミングで一気に完済することも検討しましょう。
また、借入残高が記載されている返済予定表をすぐに提出できるように、あらかじめ準備しておくことを強くオススメします。
・離婚して養育費を払っている
実は養育費も毎月の返済能力から差し引かれて計算されてしまいます。
ローン審査では戸籍謄本までは提出しないため、自己申告しなければ銀行に離婚歴がバレることもなさそうですが、以下のような場合には疑われる可能性があります。
①審査以前から、住宅ローンを借りる予定の金融機関の口座から養育費の支払いをしている。
→家族以外への定期的な支払いは借金や養育費の存在を疑われる。
②元夫,元妻との共有ローンで購入した不動産を売却して、同じ銀行でローンを組んで新しい物件に買い替える。
→現自宅のローン審査時に銀行に詳しい家族構成を把握されているため、新居購入時のローン審査で離婚したことが高確率でバレます。
・過去に支払い延滞や金融事故がある
個人信用情報に傷が入っている場合はやはり減額や否決になる可能性があります。
小さいなものであれば銀行も目をつぶってくれることもありますが、同じ傷でも銀行によって判断が違うので何とも言えません。
厄介なのは、本人も忘れているような過去のちょっとした延滞や支払い忘れが履歴として残っていることもあって、思いがけずローン減額ということも実際にあります。
不安な方は「CIC」や「JICC」などで信用情報の開示請求をしてみるのもいいかもしれません。
費用は1,000円程度です。
・産休や育休に入る女性
例えば共働き夫婦が収入合算でローンを組む場合で、
奥様は現在第一子を妊娠中、産休中の年収は本来の半分、産休明けは職場復帰して本来の給料に戻る予定
こんなとき、保証会社がどんな考え方をするかというと、
復帰予定と言いながらも出産後に仕事を辞めて育児に専念する女性も多いから、奥様の年収をそのまま計上することはできない。
です。
しかし、過去第一子を出産後に職場復帰をしていて、現在は第二子を妊娠中という状況だと「この人は働く意思と実績がある」ということで年収をそのまま見てくれたりもします。
また勤務先が上場企業だったり、本来の年収が高い場合も年収をそのまま見てくれたりするので、さじ加減が不透明だったりします。
女性が活躍する時代にもなってなんとかならないの?と思うところもありますが、これも現実です。
審査の際には、勤務先の育休・産休の社内規定書や月々の給与明細、本来の年収が記載されている源泉徴収票、育休証明書などが必要な場合がほとんどですが、会社の総務に依頼して入手に時間がかかることもあるので、前もって準備しておきましょう。
・物件の評価割れ(担保としての価値が足りない)
住宅ローンは物件を担保にするローンで、銀行は借りた人が返済できなくなった場合に物件を競売にかけて貸した分を回収できるように、物件に抵当権というものを設定します。
そのため仮に、販売価格5,000万円、銀行が独自に評価した担保としての評価3,000万円という評価割れした物件では、基本的に3,000万円までしか融資してもらえません。
この評価割れという現象、
成約事例が多く、相場が形成されている都市部などで、販売価格が市場価値から逸脱しづらい居住用物件ではほとんど起こりませんが、中古の投資用物件などでは当たり前に起こりますし、物件があまり出ず相場が存在しないような地域でも起こる可能性があります。
また、借地権などの特殊な条件が付いている物件ではフルローンが組めないことも多くあります。
東京などの都市部の、一般的な所有権の土地や戸建て、マンションなどでは、住宅ローンで評価割れを起こすことはほぼ無いので心配しなくてもいいレベルですが、地方で物件を探す場合は少しだけ注意が必要です。
■まとめ
・該当する場合は提出書類の用意に時間がかかるため、事前に相談/確認しておく。
・気に入った物件が見つかってから動き出していたら手遅れなこともあるので事前準備が大切。
・結局は保証会社次第で銀行によっても判断が分かれるため、不安であれば各所に相談しておく。
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