不動産の取得、売却、登記で気を付けなければいけない贈与税。
実際にはお金や不動産を贈与されてなくても、贈与と見なされれば贈与税の課税対象になりえます。
本記事では贈与税の税率と計算式、贈与税の軽減方法、贈与税が課税されるケースなどを解説します。
贈与税の基本と計算方法
贈与税=(贈与財産課税標準額 – 基礎控除額110万円)×税率 – 控除額です。
贈与税は、金銭や有価証券(株式)、不動産などを個人から贈与されたときに、贈与を受けた側が支払う国税で、原則として全ての財産贈与が課税対象です。
(法人から贈与を受けた場合は、贈与税が課税される代わりに所得税が課税されます)
贈与税には年間で合計110万円まで課税しないとする非課税枠(基礎控除額)が用意されているため、贈与財産額から110万円を控除したものに税率をかける計算になります。
贈与財産の評価額(課税標準額)は、不動産ならば固定資産税評価額が用いられるのが一般的です。
贈与を受けた者は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに税務署に申告する必要があります。
不動産の贈与に関わる税率には、一般的な贈与と、直系尊属への特例贈与の2種類があります。
一般的な贈与(一般贈与財産)
他人はもちろん、兄弟間、夫婦間、未成年(18歳未満)の子などに贈与する場合の税率と控除額です。
基礎控除後の課税標準額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 0.1 | なし |
300万円以下 | 0.15 | 10万円 |
400万円以下 | 0.20 | 25万円 |
600万円以下 | 0.3 | 65万円 |
1,000万円以下 | 0.4 | 125万円 |
1,500万円以下 | 0.45 | 175万円 |
3,000万円以下 | 0.5 | 250万円 |
3,000万円超~ | 0.55 | 400万円 |
例えば贈与財産の評価額が500万円の場合、
贈与税=(500万円 – 110万円)×0.2 – 25万円=53万円
となります。
直系尊属への贈与(特例贈与財産)
2015年以降の贈与で、贈与を受けた都市の年の1月1日時点で成人(満18歳以上)になっている直系尊属(子、孫)への贈与は、特例税率によって贈与税を計算します。
基礎控除後の課税標準額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 0.1 | なし |
400万円以下 | 0.15 | 10万円 |
600万円以下 | 0.20 | 30万円 |
1,000万円以下 | 0.3 | 90万円 |
1,500万円以下 | 0.4 | 190万円 |
3,000万円以下 | 0.45 | 265万円 |
4,500万円以下 | 0.5 | 415万円 |
4,500万円超~ | 0.55 | 640万円 |
一般贈与と特例贈与とを比べると、特例贈与の方が優遇されていることが分かります。
500万円の財産が贈与された場合の贈与税は、一般贈与では53万円でしたが、
特例贈与では48.5万円になります。
贈与税を軽減できる特例
父母・祖父母からの住宅購入用資金の援助
親や祖父母から住宅取得(購入・新築・増改築など)のために資金援助を受ける場合、「住宅取得等資金贈与の非課税特例」を活用することで贈与税を軽減、もしくは免税にすることが可能です。
ただしこれまでの実績を見る限り、非課税の額は年々減少しているので、利用できるうちにうまく利用したいところです。
【特例の適用条件】
1.父母、祖父母などの直系尊属からの贈与である。
2.贈与を受けた者がその年の1月1日時点で18歳以上の成人である。
3.贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された資金を住宅取得に充て、同年12月31日までに居住する。
4.贈与を受けた者のその年の合計所得額が2,000万円以下である。
5.贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告をする。
6.取得する建物が昭和57年1月1日以後に建築されたもの、もしくは新耐震基準に適合していることを証明できること。
契約期間 | 住宅の種別 | 非課税枠 |
---|---|---|
2022年1月1日~2023年12月31日 | 一般住宅 | 500万円 |
同上 | 一定基準を満たす住宅 | 1,000万円 |
2020年4月1日~2021年12月31日 | 一般住宅 | 1,000万円(消費税10%対象物件) 500万円(非課税or消費税8%対象物件) |
同上 | 一定基準を満たす住宅 | 1,000万円(消費税10%対象物件) 500万円(非課税or消費税8%対象物件) |
2019年4月1日~2020年3月31日 | 一般住宅 | 1,000万円(消費税10%対象物件) 500万円(非課税or消費税8%対象物件) |
同上 | 一定基準を満たす住宅 | 1,000万円(消費税10%対象物件) 500万円(非課税or消費税8%対象物件) |
※【一定基準を満たす住宅】
住宅性能表示制度における、「耐震等級2以上または免震建築物」、「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上」、「高齢者等配慮対策等級3以上」のいずれかを満たす住宅のこと。
おしどり贈与
正式には「贈与税の配偶者控除の特例」という制度で、婚姻関係が通算20年以上の夫婦間で、要件を満たす居住用不動産もしくは居住用不動産購入資金を贈与した場合、基礎控除額110万円に加えて2,000万円まで非課税とする特例です。
特例の適用条件は以下の通りです。
①婚姻関係が通算で20年以上の夫婦である。
一度離婚をして再婚をした場合でも、婚姻関係にあった期間が通算で20年以上であれば特例の対象になります。
②贈与財産が生活の拠点になる居住用財産(持分の贈与も可)か、その取得費用である。
注意:配偶者に住宅ローンの残債がある場合、その返済のための贈与であれば、おしどり贈与の対象外です。
③日本国内の住宅の贈与である。
④贈与を受けた者が贈与翌年の3月15日までに住み始めること。
注意:住宅を建てる場合には間に合わない可能性があります。
⑤過去に同じ配偶者からおしどり贈与を使った贈与をされていないこと。
おしどり贈与を使うと相続税を圧縮したりできる可能性があるため上手に利用したいところですが、もし贈与相手が先に亡くなってしまうと逆に相続税が増えてしまうこともあるため、熟慮して利用するようにしましょう。
贈与税が発生するケース
実際は金銭や財産のやり取りが発生しなくても、贈与と見なされれば贈与税が課されます。
例えば、
・借金を肩代わりした
・無利子で金銭を貸し付けた
・不動産を相場よりも著しく安く(高く)売却した
・親(子)が住む賃貸を子(親)が購入し賃料を受け取らずに親(子)が住み続ける
・実質の負担額以上の共有持ち分を登記した
・親が子供名義の口座に年間110万円以上預金した
上記のような場合は、実質的に財産を贈与したとされたとみなされる可能性が高いです。
不動産の領域で特に気を付けたいのが、親族間売買の売買代金と、登記する持ち分です。
親族間売買で適切な査定を受けずに売買代金を設定すると、相場からのズレがそのまま贈与にあたる可能性があります。
また共有名義で不動産を購入する場合、出資割合を正しく計算して持ち分を登記しないと、不当に持ち分を持ちすぎている名義人に対して贈与税が課される可能性があります。
売買代金4,500万円、取得諸費用500万円、総額5,000万円の不動産を夫婦の共有名義で購入。
夫が4,000万円(総額の4/5)を支払い、妻が1,000万円(総額の1/5)支払った。
本来なら出資割合をもとに登記持分を夫4/5:妻1/5にすべきところ、夫3/5:妻2/5と登記した。
この場合、妻は5,000万円×1/5=1,000万円贈与されたとみなされます。
なお、贈与の申告をしなかったり課税を逃れるために贈与を隠したり場合、重加算税を課される可能性もあるため、基礎控除額を超える贈与を受けた場合は、必ず税務署へ申告をするようにしましょう。
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