
街中でよく見かける、建物の道路側に置かれている小さなスロープ。
「車の出入りがしやすくなるから」と、ホームセンターなどで購入した“段差解消ブロック”を道路との境目に設置しているお宅、意外と多いですよね。
でも実はこれ——法律上は違法行為にあたる可能性があることを知っていますか?
◆「ちょっとだけ置くだけ」でも道路法違反に?
道路と敷地の境目にある段差は、多くの場合、公道(道路)と私有地の境界部分に位置しています。
この道路部分に私的な物を設置する行為は、「道路法第43条」に抵触するおそれがあります。
道路に工作物その他の物件を設け、または道路の構造を変更してはならない。
つまり、たとえ“簡単に動かせるブロック”であっても、道路上に設置して通行を妨げるような状態になれば違法なのです。
「ちょっと車が擦るから」「夜だけ置いているから」「みんなやっている」といった言い訳も、残念ながら通用しません。
◆刑事・民事の責任が問われることも
違法設置が見つかった場合、道路法違反(第102条)により撤去命令や罰金の対象になるほか、万が一それが原因で通行人や自転車が転倒してケガをした場合などには、損害賠償責任を問われる可能性もあります。
たとえば、
・夜間、段差解消ブロックに気づかず歩行者が転倒
・自転車が接触して破損やケガをした
・緊急車両の通行を妨げた
こうしたケースでは、設置者が過失責任を負うこともあります。
万が一それが原因で人が亡くなったともなれば、損害賠償責任はとんでもなく重くなることが容易に想像できます。
「便利だから」「みんなやっているから」で安易に考えてしまうと、取り返しのつかないトラブルに発展しかねません。
◆内水氾濫で資産価値に影響する可能性も
道路にもよりますが、段差ブロックが置かれがちな場所は、雨水を流すための側溝が設けられていることも多い場所です。
段差ブロック本体で側溝を塞いでしまったり、ブロックに溜まりがちな泥や落ち葉等によって側溝までの雨水の流れを遮ってしまうと、雨水を適切に排出できずに道路が冠水してしまう可能性があります。
もしも冠水などで建物に浸水被害が生じた場合、修繕に費用がかかることはもちろん、自治体がまとめて一般公開している「浸水履歴」に記録されることになります。
ゲリラ豪雨が増え、ハザードマップを気にする方が増えた現代では、家を買う・借りる際に浸水履歴を確認する人も増えてきましたし、仲介業者も基本的に浸水実績の有無はお客様に告知します。
浸水履歴のある物件や同じ道路沿いの物件は敬遠されがちな傾向があるため、そうなると自宅の資産価値的にも大きなハンデを負う可能性があります。
◆合法的に段差を解消するには?「道路の切り下げ」という方法
では、車の出入りをスムーズにするにはどうすればいいのでしょうか?
合法的な方法は、自治体に申請して「道路の切り下げ工事」を行うことです。
この工事は、道路と敷地の段差をなくすように歩道の一部をなだらかに改修するもので、正式には「乗り入れ工事」と呼ばれることもあります。

申請先は各自治体の道路管理課・土木課などで、許可を得たうえで、指定業者または許可業者が施工します。
工事費用は原則として申請者(敷地所有者)の自己負担になります。
金額は地域や道路形状、切り下げの範囲によって異なりますが、おおむね10万~30万円前後が目安です。
「少し高い」と感じるかもしれませんが、法的に認められた方法であり、長期的な安全と安心を買うコストといえます。
◆まとめ:「知らなかった」では済まされない道路利用ルール
段差解消ブロックは、確かに便利で即効性のあるアイテムです。
しかし道路を私有地の延長線のように扱ってしまうと、法律上も安全上も問題が生じます。
もし自宅前の段差で困っているなら、まずは一度、自治体の道路管理課へ相談してみましょう。
許可を得た上で工事を行えば、堂々と安全に出入りできるようになります。
・段差解消ブロックを道路上に設置するのは違法になる場合がある。
・罰金や損害賠償のリスクが常にある。
・段差をなくすには「道路の切り下げ」工事が合法的な解消方法。
・相談窓口は自治体の道路管理課、費用は10~30万円ほど。
身近なところに潜む“知らなかった違法行為”。
正しい知識を持って、安全でトラブルのない街づくりを心がけたいですね。


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