不動産の評価の方法はたくさんありますが、土地に関しては「方位と接道数による加点」と「形状による評価の補正率」というものがある程度決まっています。
もちろん駅距離、周辺環境、需給バランス、価格帯やサイズ感による坪単価の調整はありますが、今回は土地の形状だけに着目した場合の「税務的な評価額」をもとに、住宅地として「最高評価の土地」はどんな土地かについて考察してみました。
方位と接道による評価
日本においては一般的に、南・東・西・北の順番に評価が高くなり、接道している道路の数は出入り口の自由度や通風、採光が向上するため、基本的に接道数が多い方が評価が高く、斜線規制などの建築制限のよる建築のしやすさを考慮すると、方位に対して向きが振れていない土地の方が評価が高い傾向にあります。
これは国税庁による不動産評価でも実際の査定でも基本的に同じです。
下図は真北向きの土地を基準(ゼロ)としたときの、土地の評定ポイントの一例です。
※行政や査定業者によって微差があります。
各種補正率
相続税の計算などで土地の評価額を算出するのには、国税局が作成した調整率表というものが使用されます。(補正率は不定期に見直されています)
調整率表には土地の用途地区や土地の規模に応じて、①奥行補正 ②間口補正 ③不整形地補正(かげ地補正) ④がけ地補正 ⑤規模格差補正などがあり、基本的には基準を1とした減点方式になっています。
奥行補正
補正で減点されない奥行きの範囲は、10m~24mになっています。
間口補正
間口は8m以上で減点されなくなります。
奥行きと間口の比率補正
[奥行き距離 ÷ 間口距離]の割合が大きくなる(土地が長細くなる)と減点対象です。
これによると奥行きが間口の2倍以上になると減点されることになっているため、土地がより正方形に近い、もしくは奥行きより間口の方が広い土地が高評価という事になります。
不整形地
整形地と不整形地では整形地の方が評価額も査定額も高くなります。
たとえ不整形地でも、実際の土地を整形地で囲った時にハミ出た部分(かげ地)の割合が10%以内であれば評価額上の原点は減点はありません。
がけ地補正
敷地の一部に崖がある場合は、がけ地部分の向きと面積割合によって減点率が定められています。
ガケは基本的に減点対象ですが、がけ割合10%以下では減点されず、10%を超えても方位別の評価と同じく、南・東・西・北の順に減点率が低くなっています。
規模による補正
土地の規模が大きくなると購入できる顧客層が減ることから、坪単価を下げないとなかなか売れなくなります。
評価額上は、500㎡以下の土地では減点対象になりません。
方位・接道・補正率を踏まえた最高評価の土地はコレだ!
これまでの情報をまとめると、下記のような土地が評価上の最高の土地になります。
・東西南北に対して土地の向きが傾いていない
・東南西の三方角地
・奥行き10m~24m
・間口8m以上
・奥行き:間口が2:1以下
・かげ地割合10%以下
・がけ地割合10%以下
・敷地面積500㎡以下
上記のような土地を所有されている方は、数ある土地の中でも一番評価額が高いであろう(税金も高いであろう)土地を所有していることになります。
最高評価の土地=最高の土地 ではない
実際の不動産取引市場での土地の価格は、
・駅距離
・周辺環境(騒音、周辺建物、近隣施設)
・道路の幅員と道路種別(公道or私道)
・建物の建てやすさ(正方形の土地は建てづらいなど)
・需要のある広さか
・価格が顧客層に合うか
・分割しやすいか
など、より現実の市場に則した観点で決定するため、
評価額上の最高が最高の土地とは限りません。
評価額上は4方角地が最も高評価ですが、個人向けの住宅地の場合、4方全てを道路に囲まれている土地はプライバシーやセキュリティの観点から好ましく思われないこともあるため、現実的には東南西の三方角地が一番高く評価されたりします。
戸建て用地として100㎡程度の土地が人気の地域において400㎡の土地を売る場合は、土地を分割するか坪単価を相当下げないと誰も買ってくれないということにもなります。
一般的な戸建てを建てたい人にとっては建築コストが抑えられる平坦な土地を好みますし、眺望やビルトインガレージが欲しい人は高低差があったり崖になっている土地を選ぶでしょう。
最高の土地の基準は人それぞれで、またどんなに探しても100点満点の土地は見つかるものでもありませんが、「叶えたいライフスタイルを実現できる土地」であれば、それはあなたにとっての最高の土地と言えるかもしれません。
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