売買契約の停止条件・解除条件の違いと例

ノウハウ・豆知識
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不動産の売買契約は、契約後に住宅ローンが否決されたり、必要な行政許可が取得できなくなったりと、様々な不確定要素によって契約の履行ができなくなってしまうことがあります。

そこで出てくるのが停止条件解除条件です。

似た言葉なので不動産業者でも間違えて覚えていることがありますが、二つの性質は法的に大きく異なり、仲介手数料や代金の支払い時期も違います

この記事では両者の違いと活用例について解説します。

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■停止条件と解除条件の違い

停止条件付契約とは、指定した条件が成就したら初めて有効になる契約のことを指します。
(条件成就までは契約の効力が停止している)
もし条件が成就しなければ、契約は無効になります

宝くじが当たったら新しい車を買ってあげる。

これは宝くじが当たることを停止条件とした停止条件付契約です。
宝くじが当たらなければこの契約は無効になります。

一方で解除条件付契約とは、指定した条件が成就したら契約が解除される(解除できる)契約のことを指します。

新しい車を買ってあげる。ただし買う前に交通違反を一度でもしたら車は買ってあげないからね。

これは買い与えられる側が交通違反をしたら契約が解除される解除条件付契約です。

停止条件付契約と解除条件付契約の違い

両者は似ているようでも、法的に大きな違いがあります。

停止条件付契約では、契約書にサインをしたとしても条件が成就するまでは契約内容が有効にならないため、その間は売主・買主ともに契約で定めたそれぞれの債務を履行する義務はありません。(中間金や残代金の支払い等)

他にも例えば土地の停止条件付売買契約をAB間で結んだとして、「〇月〇日までにAが土地の測量図を作成してBに交付する」という取り決めをしていたとしても、その期日までに停止条件が成就していなければ、Aは測量をする必要もありませんし、Bは早く測量図をくださいと主張することもできません。

なぜなら契約の効力が停止しているからです。
(この場合は測量図交付の期日の設定自体も悪いということにもなります)

一方、解除条件付契約は、契約書にサインした瞬間から契約が有効になるため、契約書に定めた買主・売主それぞれの債務(約束事)は契約時点から発生することになります。

■停止条件付契約の具体例

・売主が引越し先物件を購入できることを停止条件にする

売主
売主

早く自宅売却の目途をつけたいけど、購入予定の新居を買えることがまだ確定していないから売却するのは不安だわ…

例えばこのような場合、売主が購入予定の新居を無事に買える(引渡しを受けられる)ことを停止条件にして自宅の売買契約を結んだりします。

これによって売主は、売却の目途を早めに立てることができる上に、万が一購入予定の物件が買えなかったときに、引越し先がなくなったにも関わらず自宅を手放さないといけないということがなくなるわけです。

一方、買主は停止条件の成就をいつまでも待つことはできないでしょうから、実際には停止条件成就の期日を指定したり、売主が購入予定物件の引渡しを受けられることを条件とはせず、購入先物件で利用する住宅ローンの本審査承認が取れることを停止条件にするなど、停止条件を成就しやすくして契約をしたりします。

なお、このような二つの売買契約が連動した契約では、「一方の契約が解除になった場合にもう片方の契約も解除にする」などの解除条件を設けることが多いです。

・買主の自宅が売却できることを条件にする

前述のパターンと逆で、例えば買主が自宅の売却資金を元手に売主の不動産を購入するような場合では、買主の自宅の買い手が見つかることを停止条件にして売買契約を結ぶことがあります。

ただし売主は売買契約後もしばらくの間、停止条件が成就されるか分からない不安定な状況になってしまうので、買主が買い手を見つける期限を設けたり、買い手の住宅ローンの融資承認を停止条件とするなど、やはり条件を緩和することがほとんどです。

“現段階で”購入能力がない相手と結ぶ契約は、解約になるリスクが通常よりも高いと言えるかもしれません。

そのため、少なくとも買主が自宅売却の売買契約を既に結んでいるなど、資金力確保の確度が高い状態でないと契約をしてくれない売主も多くいます。

停止条件付契約と仲介手数料】

契約時と引渡し時に半金ずつ支払うことが慣習になっている仲介手数料ですが、停止条件付契約では、契約締結時に仲介手数料を支払うことはありません

契約書にサインした時点で停止条件が成就されていなければ、有効な売買契約に伴って発生する仲介手数料の請求権も存在しないと解されます。

■解除条件付契約の例

解除条件の代表格は住宅ローン利用の解除条項、いわゆるローン特約ではないでしょうか。

買主が住宅ローンを利用して不動産を買う場合、あらかじめ定めた金額の住宅ローンを期日までに承認してもらえなかった場合に、買主側から契約を白紙解約できるという内容です。

契約が有効になった後に契約が解除されることから、これは解除条件になります。

一般的な売買契約の解除条件には他にも、違約解約、滅失毀損による解除、譲渡承諾の特約による解除、契約不適合責任による解除、反社会的勢力の排除条項による解除、その他の特約による解除などがあります。

それぞれ解約に伴う費用負担(解約金)や、支払い済み金員(手付金や仲介手数料)の取扱いに違いがあるため、よく理解をして契約をすることが大切です。

▼契約解除に伴う費用や取扱いの違いはこちらの記事をご覧ください▼

【注意】停止条件付契約の解除と手付金

いくら効力が停止しているとは言え、停止条件付契約も立派な契約です。

そのため停止条件成就前であっても正当な理由がないと契約を解除することはできず、解除したいからと言って条件成就を故意に妨げたり、別の第三者に売却や譲渡をしたりすると損害賠償の対象になります。

そこで、停止条件付契約を結ぶときには、通常の売買契約と同様に手付金の授受を行い、契約を自由に解除できるよう逃げ道を作るのが一般的です。

売買契約時に授受する手付金は解約手付の性質を持つ(=手付契約)ので、停止条件付の契約でも手付金の放棄(買主側)、もしくは倍返し(売主側)によって手付解除することができるようになります。

停止条件付契約では条件成就前の代金支払い義務がないと書きましたが、売買契約と手付契約は別のもので、手付金を支払う=売買代金の一部を支払った、ということにはなりません。
(標準的な売買契約書の約款には「手付金は残代金支払い時に売買代金の一部に充当する」と書かれているので、授受された手付金は契約時点では売買代金の一部ではないということになります)

▼手付金については以下の記事もご覧ください▼

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