コーポラティブハウス、通称『コーポラ』ってご存じですか?
SUUMOなどの不動産サイトでマンションを検索していると、たまにめちゃくちゃオシャレで独特な間取りをしている物件を発見します。
「聞きなれないシリーズのマンション名だな?」と調べてみたらコーポラティブハウスだった、ということは少なくありません。
外観や管理形態的には一般的なマンションと同じように見えるコーポラティブハウス。
その仕組みと、買うことのメリットとデメリットについて解説します。
■コーポラティブハウスとは?
コーポラティブハウスは通常のマンションと同様に区分登記されたマンションです。
しかし大きく異なるのは、企画から建築までのプロセスを買主が主体となって行うという点で、名前の由来の通り買主達がcooporative(協同)して造り上げるのがコーポラティブハウスです。
まず住宅取得を目的とした人々が集まって組合を組織し事業主になり、コーポラ事業のコーディネートを請け負っている企業などと協力して、土地の取得から建物の設計、施工会社の選定、管理規約の作成等々をほぼオーダーメイドで進めていきます。
そのため新築でありながらまるでフルリノベーションを施したかのように、住戸によって全く違う間取りと仕様になっていて、
マンション版の注文住宅とも言えます。
通常の分譲マンションのような、デベロッパーが間取りや仕様を決めて、完成予想図やモデルルームの見学をした買主が申し込み、購入、という流れとは大きく異なっています。
■メリット
・新築なのに自由設計
最大の魅力は各組合員(取得希望者)に合わせて間取りや仕様をほぼフルオーダーで建築できる点です。
分譲マンションは良くも悪くも万人ウケもあるでしょう。
分譲マンションを新築で購入した後に二次工事でリノベするのはとてもコスパが悪いので、最初からフルオーダーできるコーポラティブハウスは、こだわりの強い人にとっては好都合でしょう。
・居住者のコミュニティが強固
コーポラティブハウスは、計画立案から完成まで2~3年かかることもあるほど長期戦です。
その間、共通のゴールに向けて組合員同士で定期的に打ち合わせをしながら進めていくため、完成する頃には気軽に話ができる関係ができていることが多いようです。
通常の新築マンションで『入居者全員が顔見知り』なんてことはまずありえないので、
入居時に素性を理解しあえているコミュニティが出来上がっているというのは、生活の安全性・快適性の面ではメリットと言えます。
・低コスト&透明性が高い
一般的な分譲マンションでは、
・大々的な広告
・モデルルームの建築費用
・販売員などの人件費
・事業主(デベロッパー)の利益
などの費用が販売価格に上乗せされています。
一方コーポラティブハウスでは、組合員を募るための広告はするものの、上記のような販促費用は基本的に発生しませんし、事業主の利益も不要です。
また組合が直接施工会社や設計士等と契約を行うため、何にいくらかかったのかが分かりやすく、コストの透明性が非常に高いです。
コーディネーター(コーポラ事業会社)への報酬は当然発生しますが、それを差し引いても通常の分譲マンションと比べると割安に新築マンションが取得できることが多いです。
・室内の仕様を高くできることも
前項のように通常のマンションよりも割安に取得できることも少なくないコーポラティブハウスでは、浮いたお金でキッチンのグレード上げるなど室内の仕様にこだわれるというのもメリットです。
事実、中古で流通しているコーポラティブハウスの建具や設備は、平均的な分譲マンションよりも高価なオーダーキッチンなどを採用している住戸も少なくありません。
いずれにしてもお金のかけ方に柔軟性を持たせられる点は大きなメリットでしょう。
■デメリット
・リセール性が悪いことも
オーナーのこだわりが強く反映された住戸はとてもオシャレで目を引きますが、こだわりが強すぎて万人ウケしないことが少なくありません。
床面積は80㎡でファミリータイプの広さなのに間取りは1LDKのDINKS向けなど、
一般的な需要とマッチしていない個性的な住戸も非常に多いです。
(一般ウケする間取りにするならコーポラじゃなくていいですしね)
刺さる人には刺さりますし、結局は販売価格次第で安ければ売れるのですが、周辺の分譲マンションと同じような坪単価で売却しようとしてもなかなか思うようにいかないことも多いのが現実です。
・ブランド力は弱い
大手分譲、施工のマンションと比べるとブランド力に欠ける点はリセール時に不利に働く可能性があります。
マイホームを買う人は少なからず安心感を求めます。
安直かもしれませんが「大手」「実績がある」「歴史がある」などのブランドイメージが安心の裏付けになりやすいことから、その点では少なくても有利とは言えないでしょう。
・修繕積立金の値上げ幅が大きいことも
コーポラティブハウスの住戸数は一般的に10世帯、多くても20世帯程度と少数であることが多いです。
マンションの修繕費用は築年数が経過するほど高くなるため、毎月の修繕積立金は長期修繕計画に則って上昇していくものですが、
世帯数が少ないと1戸あたりが負担する修繕積立金が大きくなるので、
修繕積立金の値上げ幅は大きくなる傾向にあります。
値上げ幅はマンションの設備にもよるので、世帯数によって一律の目安はありまんが、
少なくとも少数世帯のコーポラを検討するなら、長期修繕計画書や管理組合の議事録から値上げの予定や見込みを確認したり、管理会社発行の重要事項調査報告書で修繕積立金の積立額の状況なども確認しておきましょう。
・よくも悪くもコミュニティの距離感が近い
コーポラは完成までの間に組合内で何度も打合せをすることになるため、自然と組合員同士の距離は縮まっていきます。
ご近所とは付かず離れずの関係になりたいと考えている人は少なくないもので、近すぎる距離感に苦手意識がある人にはコーポラは向かないかもしれません。
また中古でコーポラを購入する場合、居住者のほぼ全員が顔見知り状態のコミュニティができている中に新規で入っていくことに抵抗を感じる人も中にはいます。
他所者扱いで村八分になった、なんてことは聞いたことがありませんが、管理組合員の距離感が近すぎると居心地の悪さを感じてしまう人がいるのは事実です。
・入居までに時間と労力がかかる
前述の通り、コーポラティブハウスは完成までの間に土地の取得、設計打合せ、建築、管理打ち合わせなど多くの工程があるため、どうしても年単位の時間が必要になります。
また一戸建ての注文住宅と違って自分の独断で物事を進めていけないため、組合員同士の話し合いの中で消耗することもあるでしょう。
それも含めて楽しいと思えれば良いのですが、コーポラ特有の労力は必要になるので、
単純に『注文住宅とマンションのいいとこ取り』とまでは言えないでしょう。
■まとめ
コーポラティブハウスとは、
・自分達で造るフルーオーダーの注文マンション。
・通常の分譲マンションよりも割安で取得できる可能性大。
・繋がりの強いコミュニティができる。
・入居までに2,3年かかることも。
・リセール性が悪いことも(個性的な間取り、ブランド力の無さ等)
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