web広告で見かけることも多い一括査定。
住所と連絡先を入力して待つだけで、大手を含む複数の不動産会社が自宅の査定額を提示してくれる。
一見便利で時代に合ったサービスのようですが、査定結果をそのまま鵜呑みにするのは危険かもしれません。
一括査定や複数社で査定を行う場合の問題点と業界の実情についてお話します。
■一括査定の実情
一括査定からの流れ
- 1.webで査定申し込み
- 2.提携している不動産会社から簡易査定結果と訪問査定の打診連絡
- 3.複数社による訪問査定、売却計画の提示
- 4.媒介契約締結
- 5.売却スタート
大まかにこのような流れになりますが、問題は2~4の間にあります。
売主とのアポ取り競争
今の市場や取引事例をもとに計算をすると、査定額は4,500万円です。
4,500万円を前提にして今後の資金計画を立てましょう。
当社はベテラン揃いで営業力が高いので、任せてもらえれば5,500万円で売れます!
任せて下さい!
「5,6社から連絡がきていて全部と会うのは負担だけど、とりあえずB社の話は聞いてみたい」となる方が多いのではないでしょうか?(実際多いのです)
- 高く売りたい。
- けど全員と会うのは面倒。
- 既に訪問査定のアポが3件入ったから、他の会社は無視でいいか。
このような心理が働くため、仲介会社にとっては他社に先んじて連絡をすることと、話を聞いてもらうために他社よりも高い金額を提示することが何より大切になっていて、高め査定はもはや業界の常識にもなっています。
査定額の水増し
前述のとおり、高い査定額を提示すれば、売主に興味を持ってもらえる可能性が高くなります。
逆に相場通りの堅実な査定額を提示すれば、そもそも連絡が取れなかったり、土俵に上がることすらできない確率が跳ね上がるという正直者がバカを見やすい構造になっています。
そのため、実際に売れる金額よりも水増しすることが、もはや当たりまえになっているのが現状です。
一概には言えませんが、算出した正規の査定額+10%くらいされている感覚です。
高い金額を出して期待感を持ってもらえれば媒介が取れる確率が上がる。
今の金額じゃ売れないかもしれないけど、ジリジリと価格を下げていけばいつかは売れるし、広告を出せば買い客の集客もできる。
とにもかくにも、媒介をもらうことが何より大切!
みんながみんなではありませんが、大手中小問わずこんな考え方が横行しています。
人の心理と業界の構造上、仕方のないことかもしれませんが、
売れる金額が知りたい売主と、媒介を取ることが目的の仲介会社とで歪みが生まれているのが一括査定の現状だと思います。
媒介取得数が評価される業者もある
成約による売り上げではなく、媒介取得件数が昇給や昇格の評価項目になっている会社があるというのも、この傾向を助長しています。
とある誰もが知っている不動産大手でも、つい最近まで人事評価に媒介取得件数が関係していたことから、相場度外視の査定額を出していることも頻繁にありました。
「売れる売れないは関係なく、媒介が取れればそれでよし」という営業担当者も実際にいるのです。
仲介会社は買主じゃない
当然ですが、車の買取査定などと違い、仲介会社は査定額で買ってくれるわけではありません。
買主は不動産を探しているお客さんで、成約価格は相場と市場(買主)によってほぼほぼ決まるものです。
それを念頭に入れて、「他社よりも高く売れる」という業者に対しては、その根拠を確認し、納得することが大切です。
売り出し価格は売主が決めるもの
査定結果はあくまでも査定結果ですので、いくらで売り出すかを最終的に決めるのは売主です。
それぞれの仲介会社が提示してくる販売計画を参考に、アドバイスを受けながら販売開始価格を決めましょう。
また他社よりも査定額が低い仲介会社でも、担当の営業の人が親身になって考えてくれたり、現実的なことを言ってくれるなど信用できる人なのであれば、「他社でこれくらいで売れると言われたからその金額でチャレンジしたい」ことを相談して媒介契約を結ぶ方が、査定額が高いだけの会社に任せるよりずっと良いかもしれません。
使い方が大切
web一括査定はとても楽なうえ、仲介会社とコンタクトを取るための入口として利用するにはとても便利なサービスです。
と同時に、前述のような構造的な問題が生まれやすいサービスでもあります。
・査定結果を鵜呑みにしない
・耳障りの良い事しか言わない仲介会社には疑問を持つ
・嫌われる覚悟で厳しいことを言ってくれる仲介会社に耳を傾ける
このような姿勢で冷静に考えて判断をすることが大切です。
■まとめ
・web一括査定の査定額は水増しされている傾向がある。
・査定額の根拠をしっかりと確認して納得すること。
・販売開始価格を決めるのは売主。
・売れる売れないは市場によって決まる。
・現実的な目線で話してくれる仲介会社も大切にする。
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