道路の種別とセットバック、接道なしでも建築できる例外について

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建築基準法では、敷地が「幅4m以上の建築基準法上の道路に接道」していないと建物を建築できないことになっています。

じゃあ4m未満の道路上にある土地には建てられないの?
建築基準法上の道路に接道していないと絶対に建てられないの?

そうとも限りません。

今回はそんな道路について解説します。

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■道路の種別と特徴と注意点

建築基準法上では、道=道路 ではありません

舗装されている道でも実は通路だったり他人の敷地だったりするかもしれません。

不動産の重要事項説明欄にも記載されていますが、建築基準法上の道路には以下の6種類+アルファがあります。

重要事項説明書の道路種別部分抜粋
重要事項説明書の抜粋

・1項1号道路

都道府県道、区市町村道、国道などのいわゆる普通の公道です。

道路法による道路の中で幅員が4m以上の物のみが1項1号に認定されています。

・1項2号

主に都市計画や区画整理事業などの開発行為によって作られた道路で、「開発道路」とも呼びます。

2号道路は将来的に区市町村などに管理が移管されて1項1号の公道になることもあります。

・1項3号

建築基準法が定められる前(昭和25年以前)か、都市計画区域に指定される前からすでに存在してた幅員4m以上の道路の事です。

4m以上の公道であれば1項1号になることから、基本的に私道になっていることが多いです。

・1項4号

2年以内に都市計画法などによって新しく作られたり幅員が変更される予定の道路の事です。

幅員は4m以上で、都市計画として事業の執行が予定されている道路は4号道路として認定されています。

・1項5号(位置指定道路)

「建築基準法で定める基準に適合した道路で、特定行政庁から位置の指定を受けたもの」
なんのこっちゃだと思いますが、例えば合計敷地面積が1,000㎡以下の宅地として開発された分譲地の中に作った道路(私道)などが位置指定です。

分譲地内で親切された位置指定道路
分譲地内の道路は新設された位置指定道路

道路としての基準を満たす私道を特定行政庁に道路として認めてくださいと申請することで、建築基準法上の道路として認定されたものが位置指定道路になります。

ちなみに位置指定道路のある分譲地を買った場合、その道路は接道している敷地の所有者で共有して所有することがほとんどです。(所有権移転登記もします)

・二項道路(みなし道路)

建築基準法が定められたとき(昭和25年)もしくは、都市計画区域として指定される以前から存在していた幅員(1.8m以上)4m未満の道路のうち、すでに建物が立ち並んでいて特定行政庁が指定したものです。

すでに家が立ち並んでいるところに、いきなりこの道は道路として認めないので明日から再建築はできません、となると大変なことになるので、救済処置として「道路とみなされた」わけです。

しかし今後も幅員4m未満のままでは防災の観点でも困るので、再建築の際にはセットバックが必要になります。

・セットバック(道路後退)

道路は幅員4m以上ないといけないので、建て替えの時に前面道路幅員が4mを切っている敷地は、道路中心線から2mの部分の敷地を道路として提供し幅員を広げる義務があります。

町中でこんなイビツな形になっている道を通ったことはありませんか?↓

道路幅員が4m未満の場合はセットバックが必要
セットバックのイメージ

セットバックは基本的に建替えの際に行うことになっているため、古い建物の前面道路はセットバックされておらず狭いですが、将来的に並びの建物も建て替わればきれいな幅員4mの道路が完成します。

なお、セットバックした部分も敷地の一部で所有権がありますが、道路として提供しているので、建築有効面積として算入することができません。

仮に100㎡の敷地で10㎡のセットバックが必要なら、90㎡の敷地という前提で建ぺい率/容積率の計算をすることになるので、当然建築できる建物は小さくなります。

不動産の広告内に「敷地面積(実測面積、登記簿面積)」「セットバック面積」などの記載があるはずですので、
建物のボリュームを考えたり坪単価で物件の良し悪しを判断する場合は、必ず敷地面積からセットバック面積を引いた「有効敷地面積」をもとに計算するようにしてください。

また、敷地の道路向かいが河川や崖地などで将来的なセットバックが見込めない場合は、
道路中心線から2mではなく「道路の反対側から4m」のセットバックが必要になるので注意してください。

セットバックした部分は、建築有効面積として算入することができません。
セットバックと有効面積

43条但し書き(ただしがき)道路

敷地が建築基準法外の道(水路や通路など)に付いていたり、そもそも道路や道に一切接道していなかったりする場合は、建築のたびに建築審査会の許可をとって建物を建築することになり、これを但し書き許可といい、但し書きによって建築ができるようになる道を但し書き道路などと呼んだりします。

但し書きの代表例として多いのが「水路敷き」と言って、建築基準法上の道路と敷地の間に水路が挟まっている(直接的に接道義務を果たせていない)場合です。

暗渠(あんきょ)という水路部分に蓋がされている道があり、一見道路に見えても実はその下には水路が流れているというものもあります。

普通に家が立ち並んでいることも多く、パッと見は分かりづらいです。

但し書きは原則的として建築のたびに建築審査会の許可が必要で、一度許可をもらっても将来の建替え時にまた建築許可がもらえる保証があるわけではない上に、2階建てまでしか建ててはいけないなどの制限がかかる場合もあります。

但し書き許可が得られるかどうかで土地の価値が大幅に変わるため、
販売を依頼された不動産会社が一番に気にして調査をする部分です。

・但し書き許可の条件とは

但し書きの許可がもらえるのは、下記の基準に適合し安全が確保できる場合とされています。

 その敷地の周囲に公園、緑地、広場等広い空地を有する建築物であること。

 その敷地が農道その他これに類する公共の用に供する道(幅員四メートル以上のものに限る。)に二メートル以上接する建築物であること。

 その敷地が、その建築物の用途、規模、位置及び構造に応じ、避難及び通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路であつて、道路に通ずるものに有効に接する建築物であること。

建築基準法施行規則第10条の3第4項より

平たく言うと、

・道路には接道していないけど周囲に広い空き地などの避難経路があり、消防車などの緊急時の活動に対応できて安全性が確保できる。
・道路っぽい幅4m以上の道に2m以上接道している。

という条件をクリアすることで再建築が可能になるということです。

また、幅が十分にある神社の参道なども安全な避難経路として認められるので、参道沿いの土地でも再建築が可能になることがあります。

なお建築審査会による審査には1ヵ月ほど時間がかかります。

・【法改正】建築審査会の許可が不要な但し書き

建築のたびに建築審査会の許可が必要だと、あまりにも手間で土地の流通面でも不透明さが悪影響を与えるため、一定の要件を満たす敷地については包括的に許可を出し、建築審査会の許可が不要になる改定が2018年に行われました。

避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準(1)に適合する幅員4m以上の道(建築基準法に定める道路以外の道)に2m以上接している建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途および規模に関し国土交通省令で定める基準(2)に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものについては、接道規制を適用しない。

建築基準法第43条2項1号
  1. 農道等で公共の用に供する道で一定の舗装がなされている、あるいは、通路等のうち位置指定道路の基準に適合する道で、道の権利者および道を位置指定道路の基準に適合するよう管理する者の承諾(使用合意)が得られていること
  2. 当該通路等に発生する交通量を制限する観点から、延べ面積200㎡以内の一戸建ての住宅とすること

つまり、

使用承諾のある舗装された4m以上の公共用の道沿いで、延べ床面積200㎡以下の一戸建てを建てる場合は建築審査会の許可が不要になったという事です。

但し書きの代表例は水路敷きという話をしましたが、この法改正によって水路敷き沿いの住宅地などはずいぶんと取り扱いが楽になりました。

将来的に100%ではありませんが、資産保護の観点からも一旦緩和された基準が厳しくなる方に改定されることはおそらくないのではないでしょうか。

■道路種別はネットでも確認できる

自分の家がどんな道路に接道しているかを調べたいときは、
「~市 道路種別」「指定道路図」などで検索をすると、多くの行政が道路種別を色分けで閲覧できるサービスを提供しています。

例えば東京都世田谷区の「iMap」というサービスではこんな感じです▼
水路(薄い水色)が緑の1項1号道路と敷地の間に挟まっているところ=但し書きが必要な箇所がいくつかあるのがお分かりいただけると思います。(ほとんどは包括許可対象)

行政のwebサービスで道路種別が確認できることも
指定道路図の例

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