手付金の後払いは違法?契約は無効になる?

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不動産の売買契約を結ぶとき、買主は売買代金の一部として手付金を売主に支払います。

手付金は、契約後に自己都合で契約を解除する「手付解除」の際の返還されないお金で、売買代金の一部として売主に預けるお金であり、売買契約締結と同時に売主に渡すことになっています。

仕事の都合から土日に結ぶことが多い売買契約ですが、大金の手付金を金曜日に引き出して自宅で保管し、契約の場に持参するのが怖いという買主は非常に多く、契約後の平日に振込ませてほしいという申し出もあります。

逆に売主からの申し出で、日程の都合で契約を早くしたいから手付金は後払いでいいよ、ということもあります。

その申し出が有効になる場合無効になる場合、法律に抵触する場合について解説します。

▼その他の手付金についてはこちらの記事もご参考ください▼

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■売主が一般個人、一般法人の場合

売主が一般個人や一般法人の場合、手付金の後払いは業法違反になるわけではありません

しかし売買契約と同時に授受される手付金は解約手付という性質を持っており、手付解除における解除料としての役割を果たすものです。

売買契約と同時に授受されなかった手付金はもはや手付金という扱いではなくなり、手付解除において効力のない金銭になってしまいます。

そのためもし契約時に手付金を1銭も授受していない場合は手付解除自体ができないという事になりますし、分割払いにした場合は、契約時に支払った分だけで手付解除ができてしまうことにもなります。

そのため手付金は必ず契約時に売主に渡すことになっており、振込などと違い確実に即時授受できる現金で支払うことが通例なのです。

実務上、仕事の都合などでどうしても契約時に現金が用意できない場合などは、売主買主間で合意の上で、先に署名捺印などの契約手続きだけして日付をブランクにしておき、後日手付金の着金が確認できた日の日付を契約書に記入して契約締結日とする、ということを行ったりはします。

ただしこれも無用なトラブルに繋がる可能性があり望ましい契約とは言えないため、やはり多少無理をしてでも原則通り契約当日に手付金を用意するようにしましょう。

■売主が宅建業者だと手付金の後払いは完全にNG

売主がマンションデベロッパーなどの不動産業者(宅建免許のある宅建業者)の場合、手付金の後払いや手付金の分割払い、手付金の貸付や立て替えなどは、「契約の誘因」「信用の供与」という行為にあたり、宅建業法上明確に禁止されています。

これは、専門知識のあるプロ(宅建業者)が知識のない一般消費者に対して、十分に考える時間を与えず、お金の準備もできないほど早期に契約をさせてしまうという行為を防止するためです。

・誘因や信用の供与による契約は無効?

上記のように契約の誘因行為や信用の供与によって売買契約を締結した場合、その違法性を指摘し契約を無効にできるかと言われると、実は業法には明記されていません

すなわち必ずしも、手付の誘因行為=業法違反=契約は無効、というわけではないということです。

そもそも誘因行為等がなぜ禁止させているかというと、専門知識のない弱者である一般消費者の買主から冷静に考える時間を奪って急いで契約させてしまうのを防ぐため。善良な買主を保護するためです。

そのため売主業者が早く契約を結ばせたいがために「手付金は後でいいからすぐ契約してください」などと誘因行為を行えば、業法違反かつ契約の無効を主張できる可能性はあります。

しかし例えば、買主の都合で手付金を後日振込にした場合などは、契約書の日付や入金日などの外形から手付金の誘因行為にあたり宅建業法違反になったとしても、契約までの過程と誘因行為禁止の目的に照らし合わせると、売買契約自体が違法に締結されたとは言えないかもしれません。

何かのトラブルにより訴訟に至り、契約の有効性が争点になった場合は、過去の判例や契約までの過程を含めて、裁判所の総合判断になります。

業法違反として宅建業者が行政処分を受けることと、締結した売買契約自体の有効性はまた別の話、ということです。

■契約後にその場でネットバンクから送金した場合はどうか?

実際、仲介の実務でも契約のその場でネットから送金し、着金確認してもらうということは広く行われているので、社会通念上はOKとされていますが、実はこの行為の是非については都庁の不動産相談窓口でも明言はしてくれず、判断が分かれる部分です。

多くの場合、銀行は土日や平日15時以降の送金は翌平日扱いになることから、送金や着金の時間によっては、必ずしも契約と同時に手付金を授受したと言えない可能性があります。

買主が明確に自分の手で契約時に送金手続きをしているので、システムの都合上着金確認が翌日になったからといって信用の供与だ!後払いだ!とはならないでしょうが、明文化した法律はまだありません。

とはいえ手付金を現金で用意するというのは古い慣習ではあるので、テクノロジーの進歩によって今後の法整備も含めて変わっていかないといけない部分かと思います。

■手付金の先払いは大丈夫?

後払いがダメなら売主に契約前に手付金を支払うのはどうか?

これはシンプルに危ないのでしないようにしましょう。

どんなに相手が信用できそうでも、契約前に手付金を持ち逃げされるリスクはゼロではありません。

まずありえませんが、もし仮に仲介業者から「売主に手付金を先払いしてくれ」と指示されたとしても応じるべきではありませんし、その仲介業者は信用に足る業者ではないでしょうから、媒介業者を変えたり契約自体を考え直す必要もあるでしょう。

■手付金の安全な支払い方

現金を自宅で保管したり持ち歩くのを避けたければ、以下の3つを検討してください。

・仲介業者に預ける

具体的には交渉がまとまって契約日時が設定できたら、
①契約前に仲介業者の口座に手付金を入金
②仲介業者が手付金の預かり証を発行し買主に渡す
③仲介業者は契約前に銀行から手付金を引き出し金庫などに保管
④契約当日に契約場所で手付の預かり証と手付金を交換する
⑤契約締結時に買主から売主へ手付金を渡す

契約前に仲介業者が倒産しないとも限りませんが、「契約の為の手付金」の名目で預かり証を発行してもらうことでリスクオフすることができます。

・横線引きの預金小切手

手付金の小切手払いも有効です。

ただし、発行する預金小切手は必ず横線引き(おうせんびき)という、平行な2本線が引かれている小切手にしてください。

横線小切手の換金は銀行口座間を通した送金になるため、万が一小切手を紛失・盗難にあっても、銀行に連絡すれば換金を阻止できますし、もし換金されても送金先口座が履歴で確認できるため追跡が可能になります。

売主が宅建業者などの法人の場合は、これに加えて「持参人払い」という条件を付けて、従業員の誰が銀行窓口に行っても換金できるようにしておくのが一般的です。

銀行の窓口で「持参人払の横線引き小切手をお願いします」と言えば伝わります。

・平日の銀行の営業時間内に契約し送金

平日の午前中など、契約時にネットバンキングで手付金を送金することですぐに着金確認が取れる時間帯に契約を結ぶことで、契約当日の手付金の授受が可能になります。

素早い着金確認のために、買主と同様に売主がネットバンキングを利用しているか、振込先の金融機関の支店・ATMが近くにあることが望ましい条件ですが、現代ではこれが最もスマートな方法かもしれません。

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