住宅ローンの返済方法は様々ですが、『ボーナス払い』をすべきかどうかで悩む方は多くいます。
今回はボーナス払いによって、どのようなメリットがどれくらい得られるのか計算し、それを踏まえて利用すべきかどうかについて考察していきます。
ボーナス払いの概要
住宅ローンのボーナス払いとは、年に2回のボーナス月に、予め決めた額を月々の返済額にプラスして返済することです。
繰り上げ返済も同様ですが、ボーナス払いには
・返済額軽減型
→返済期間はそのままで、返済月額を低くすることができる。
・期間短縮型
→返済月額はそのままで、返済期間を短くできる。
の2種類があります。
仮に4,000万円を固定金利1%で35年間(420月)、ボーナス払い約20万円で借りた場合は、返済月額と返済期間は以下のようになります。
ボーナス払い無し | ボーナス払い(返済額軽減型) | ボーナス払い(期間短縮型) | |
---|---|---|---|
月々返済額 | 112,914円 | 79,362円 | 112,914円 |
ボーナス月返済額 | 0円 | 279,667円 | 312,914円 |
返済期間 | 420月 | 420月 | 314月 |
総返済額 | 47,423,753円 | 47,448,073円 | 45,447,758円 |
期間短縮型では、返済期間、返済総額ともにボーナス払い無しよりも大幅に減少しています。
またよく見てみると、返済額軽減型ではボーナス払いをしなかったときよりも総返済額が大きくなっています。
これは返済月額が少なくなったことで、元金の減りが遅い期間が長くなるためです。
返済額軽減型には月々の返済額が下げられるというメリットはあるものの、返済総額が増えてしまう可能性があるということです。
ボーナス払いのメリット
①返済月額が抑えられる
お子様がいる家庭では特に、返済額減額型にすることで進学や習い事などの費用を捻出することができるようになるかもしれませんし、経済的プレッシャーも減るかもしれません。
②返済期間が短くなる
前述の例では期間短縮型を選ぶことで、返済期間が約9年も短くなりました。
ボーナスで払うたびに返済期間が短くなっていると思えば、頑張ろうという気も起こりそうですね。
③総支払額(総利息)が下がる
期間短縮型では元金の減少が早いため、ボーナス払いの設定次第では総支払利息の額が大きく減少します。
④金利上昇の影響が小さくなる
期間短縮型では元金の減りが通常より早いため、将来金利が上昇してもボーナス払いをしていなかったときよりも利息の上昇幅が小さく抑えられます。
ボーナス払いのデメリット
①ボーナスがもらえるとは限らない
昔から日本の給与システムはボーナスが出ることが前提になっていましたが、昨今は大手企業でも必ずしもボーナスが満額出るとは限らない世の中です。
雇用も以前より不安点になり、転職もカジュアルに行われるようになったため、ボーナスありきでの家計設計はリスクと言えるでしょう。
②総返済額が大きくなる可能性がある
前述の通り、返済額減額型では通常の返済よりも総返済額が大きくなる可能性があります。
③住宅ローン控除を使い切れない可能性がある
住宅ローン控除は『年末残高の0.7%』が所得税から控除されます。
そのためローン控除の対象期間内にボーナス払いで借入残高を早く減らし過ぎると上限の控除を受けられなくなる可能性があります。
控除をフルに受けられるようにボーナス払いの額と返済月(1月にするなど)をうまく設定したいところです。
④定年後もボーナス払いが発生する
仮に65歳を定年とする場合、31歳以降に組む住宅ローンの完済は定年後になります。
ボーナス払いを定年後にも払っていけるかについても考慮する必要があります。
ボーナス払いを変更したくなったら
転職してボーナス月が変わった、ボーナスが減額されてこれまでのボーナス払いができなくなった場合は、ボーナス払い月の変更や減額、取りやめができます。
ただし返済額減額型を選んでいた場合は、ボーナス払いをなくすことで返済月額が大きく増えることになります。
また、変更の際には銀行側による審査が必要で、返済月額が増加することから審査落ちする可能性もあります。
登記費用などがかかりますが、その時の借り入れ条件や金利なども加味して、他の銀行で借り換えができないか検討しても良いかもしれません。
もし返済が難しくなって支払いが滞ると個人信用情報に傷が入り、住宅以外への影響が出る恐れもあるため、厳しくなったら早めに売却することも視野に入れるようにしましょう。
通常の繰り上げ返済という方法もある
ボーナス払いを設定しなくても、資金に余裕ができた好きなタイミングで繰り上げ返済することができます。
通常の繰り上げ返済にも返済額減額型と期間短縮型の2つがあります。
以前は一部繰り上げ返済には手数料が発生していましたが、今はネット銀行や一部都市銀行では、ネットバンキングを利用することで繰り上げ返済手数料が無料になる銀行も多くあります。
わざわざ決まった月に決まった金額を引き落とされるボーナス払いを設定するよりも、好きな時に余剰資金で返済する方が安全ではないでしょうか。
結論
ボーナス払いを設定することの大きなメリットは①返済月額の減少②返済期間の短縮ですが、ボーナスを満額もらえることが前提になっているため現代の日本ではリスクもあります。
通常の繰り上げ返済でも同様のメリットを得られることから、ボーナス払いは設定せず、余剰資金が生まれた段階で繰り上げ返済をしていく方が安全。
なお、ボーナス払いでも通常の繰り上げ返済でも、住宅ローン控除を使い切るために年末残高を意識して返済月、返済額の設定をしましょう。
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