違法建築と既存不適格の決定的違い/融資への影響と資産価値の差について

ノウハウ・豆知識
この記事は約5分で読めます。

「違法建築」という言葉は聞いたことがある方も多いと思いますが、「既存不適格」という物件も点在しています。

両方とも建ぺい率や容積率が超過するなどの違法状態になっている物件で、現状だけ見れば両者同じに見えますが、実は融資の可否などで大きな違いがあります。

二つの違いと融資への影響、そういう物件を買っていいのかについて解説していきます。

スポンサーリンク

違法建築とは

新築・増改築により建物が既定の建ぺい率/容積率を超えている、建築当時の建築基準法を守って建てられていないなどの、ルール違反物件のことを違法建築と言います。

構造計算書偽装で話題になった2005年の姉歯事件に該当するマンションも違法建築に該当します。

「ルールを知っていながら守っていない」ということから悪質性が高いと判断されます。

違法建築に融資してくれる銀行はほぼない

違法建築は「違法の認識があったうえで」建築しているので、悪質性があります。

数年前までは、メガバンクでも規定パーセンテージ内の建ぺい率/容積率オーバーであれば通常の物件と同様に融資をしてくれていましたが、違法建築への取り締まりは年々厳しくなり、2022年現在では違法建築への融資はほとんど認められていません

違法の程度や借入人の属性、返済比率によっては稀にプロパーで融資を承認してくれることもありますが(「属性で引っぱる」などと言います)、
基本的には違法建築には住宅ローンが使えない=将来的にも売りづらい
ということが言えるのでオススメしません。

もちろん、建物を解体して新築する「古家付き土地」として購入するのであれば、建物の適法性は関係ないのでこの限りではありません。

なお、上述の姉歯事件に該当するマンションでも、適法に改修工事を行った証明書が提出できれば、合法性があるということで銀行も住宅ローンを承認してくれます。

既存不適格とは

建築当時は建築基準法などのルールに則って建築されていたものが、後の法改定公共事業などにより現在の基準に合わなくなってしまった物件を、既存不適格物件と言います。

例えば都市計画道路の実行で敷地の一部を収容された結果、建ぺい率/容積率を超過した物件などは既存不適格にあたります。

なお、旧耐震基準のマンションも現在の耐震基準を満たさないという意味では既存不適格物件ですが、これを既存不適格として扱ってしまうと莫大な数の既存不適格物件が生まれることと、後出しルールを国民に押し付けるべきではないという原則から、既存不適格物件の適用から除外されています。

計画道路の実行による既存不適格
計画道路の実行で建物が既存不適格になるケース

既存不適格物件は住宅ローンを借りられる?

既存不適格物件は法改定や公共事業などの「不可抗力」によるところが大きいので、違法建築と違って住宅ローンを借りられることが多いです。

ただし、銀行的には進んで融資したい対象ではないことから、現在の規制への不適合性の程度や購入者の属性によっては、融資が非承認になったり頭金を多めに出すことが融資条件になったりすることはあります。

既存不適格物件の購入を検討する場合は、必ず融資の利用可否について重点的に確認し、自分が購入するときだけではなく「将来の売却を見据えた時にどうなのか」を検討するようにしましょう。

都市計画道路沿いの土地を買うなら

事業化未定の都市計画道路沿いならまだしも、事業化時期が決定している計画道路沿いの土地を購入して新築する場合は、土地収用後の建物が既存不適格にならないようにあらかじめ「収容後でも適法性がある」配置や大きさで建物を建築することをお勧めします。

おまけ:増築したけど登記していない物件

たまにあるのが、増築部分の登記をしていない物件です。

建築面積や床面積が変われば、固定資産税や都市計画税も変わるため登記をする義務がありますが、それを知らずに悪意なく登記をしていない所有者は意外と多いです。

銀行は登記上と現況で建物の形状が違う増築未登記の状態では、住宅ローンを貸してくれません。

また、「増築未登記」と「増築登記済み」とでは、購入者に与えるイメージがずいぶん変わるので、
建築確認と完了検査を受けた合法な増改築であれば法務局で増築登記をしてから売却に出すことをお勧めしたいです。

・増築部分の面積が分かる設計図面等
・建築確認申請書
・検査済証
などが必要なので、なくさないように保管してください。

なお当然ですが、増改築で建ぺい率などを超過した場合は違法建築なので、登記してもしなくてもローンは使えず、販売図面の備考欄に「増築未登記」と記載して販売することになります。

番外編:後付けカーポートも違法建築?

青空天井のカースペース付きの建物を新築・購入したあとに、ポリカーボネートの天井付きカーポートを設置される方がいますが、

実はあれも土地に固着された建築物として建ぺい率に入る可能性があり、多くの場合が設置後は違法建築状態になっています。

ただし現実的には、後付けでカーポートを設置したことが誰にも迷惑になっていなければ、違法の程度が低いこともありお目こぼしされています。
というか普通のカーポートを付けて是正勧告されたという話は聞いたことがありません。

(近隣住民とのトラブルの延長で行政に告げ口されて勧告を受けたという話は聞いたことがあります…)

カーポートを設置後に売却する場合で、もし買主が住宅ローンを借りる銀行からカーポートの違法性について突っ込まれたら、撤去をして引き渡す必要が出てくるかもしれないので、撤去費用も頭の片隅に入れておきたいです。

カーポートの中には、確認申請が必要になったり、逆に緩和処置により設置しても建ぺい率への影響がほとんど出ない規格の物があるので、専門業者に相談してみてください。

また仮に合法で建築できる場合でも、周辺住民への悪影響が出ないような注意もしたいところです。

スポンサーリンク
役に立つ記事だと思われたらぜひシェアしてください!
筆者が運営するSNS/購読設定

コメント

タイトルとURLをコピーしました