マンション敷地の崖崩れ事故|賠償責任は誰に?

トラブル
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2020年に神奈川県の高台に建つマンションの敷地の一部が崩落、下の道路を歩いていた女性が亡くなるという事故がありました。

2023年6月、女性のご遺族が「マンションの管理会社」と「マンションの区分所有者」を相手取った訴訟の一部が和解し、マンションの区分所有者達が遺族に「1億円の賠償をする」ことになりました。
※マンション管理会社への訴訟は継続中

不動産を所有している or これから購入する人にとっては人ごとではない、所有権と責任について解説していきます。

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■事の概要

当時築16年程度の高台にある大手施工の分譲マンションの斜面(崖)が突如崩落し、崖下の道路を通行中の女性が亡くなった。

後の調査で、崩落の原因は斜面の風化が原因だと判明。
崩落した部分は鉄筋コンクリートの擁壁の上側、植林されている斜面部分(土部分)。

崩落の前日、このマンションの担当者だった管理会社の社員が、斜面部分の亀裂を発見していながら具体的な対策を行っていなかった疑いがあることから書類送検されている。

被害者遺族は「マンションの管理会社」と、土地所有者である「区分所有者達」をそれぞれ相手取り損害賠償請求を行った。

2023年6月、区分所有者とは賠償金1億円の支払いで和解が成立、マンション管理会社とは係争を続行中。

崩落した斜面の図
崩落したマンション斜面の断面図:土砂が落石防護柵を超えて道路に達した

■工作物責任という考え方

民法717条では工作物の所有者の責任について以下のように定められています。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

e-GOV 法令検索

要約すると、建物や塀、擁壁、植林部分などの工作物を適切に施工・保存管理していないことが原因で他者に損害を与えた場合、その所有権者や占有者(管理責任を負っている者)が賠償の責任を負うということです。

ここで言う占有者とは、主に所有者から借りて住んでいる賃借人になります。
ただしマンションの場合、一室の賃借人が敷地の管理責任までは負わないことが一般的なので、敷地内の工作物等に責任を負っているのは多くの場合マンションの区分所有者達、ということになります。

この件で区分所有者が賠償で和解をするに至ったということは、崩落した斜面部分が風化して危険な状態になっていた=維持管理状態の瑕疵が法的にほぼ認められ、損害賠償を免れない状況だった、ということかと思います。

ちなみにこのマンションの総戸数は38戸で、区分所有者が負う損害賠償額は一戸当たり約260万円にもなりますので、所有者の責任はそれほどまでに重いということです。

なお、この訴訟と並行してマンションの区分所有者達がマンションの設計会社を相手取り訴訟を行っているようです。

マンションの住人からすると、素人がマンション敷地のコンディションや危険性まで気づけないよ!何のための管理会社だ!そもそも設計に安全上の問題がある!ということで、これももっともな意見と思えるので、今後どのような決着を迎えるのか注目したいところです。

■所有権を持つ=責任を持つ

不動産を所有したり占有、借りるということは、適切な管理をする義務も同時についてくることを覚えておきましょう。

今回のように、マンションの共有敷地や共有部分の工作物にまで責任が及ぶというのは盲点かもしれませんし、日常生活でそこまで意識をしている方は少ないかもしれません。

昨今、マンションの定期総会に出席しないなど、区分所有者の自己マンションの維持管理への関心が薄れていることが問題視されています。

管理会社に管理を丸投げしていても、有事の際に最終的に責任が及ぶのは所有者です

この一件で改めて「自分たちの所有物には大きな責任が伴う」ということを自覚し、維持管理意識が少しでも高まることを願っています。

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