通常の不動産の売買契約では、契約と同時に買主から売主に手付金を渡すことになっていますが、特殊な状態での売買では第三者によって保管する「手付の保全措置」(手付預かり)を行います。
どのような場合に手付預かりとなるか、手付預かりとすべきかについて解説します。
手付預かりの概要
手付金・内金・中間金等はまとめて手付金等と呼びますが、これらの金銭は取引が引き渡しまでの間に解約になった場合に、売主から買主へ返還されるべき金銭です。(手付解除を除く)
そのため、手付金等が一定以上の多額になる取引、売主の経済的状況から取引を最後まで履行できない可能性があると思われる場合などに、売主による持ち逃げや使い込みを防止し確実に買主へ引き渡しができるように、「銀行の保証」「保険会社の保険商品」「宅地建物取引業保証協会」のいずれかで手付金を保全することになっています。
原則は仲介業者が預かって保全するものではありません。
※原則という意味については後述します。
売主が宅建業者の場合で手付金の額が一定を超える場合は、手付金の保全が義務になっています。
手付預かりになるケース
売主が宅建業者の未完成物件
建築中の新築物件など、未完成状態の物件の契約において、
手付金の額が物件価格の5%超もしくは1,000万円超の場合は、手付金を保全する義務があります。
売主が宅建業者の完成物件
完成済みの新築物件やリノベーション済み物件など、売主が宅建業者の物件の契約において、
手付金の額が物件価格の10%超もしくは1,000万円超の場合は、手付金を保全する義務があります。
物件が債務超過状態
個人が住宅ローンなどを組んで所有している物件などで、物件を担保にした借入の残高が売買代金を上回っている物件(債務超過物件)の場合は、売却によって借入を完済して買主に引き渡せることが確約できないため、引き渡しまで手付金等を保全します。
任意売却物件
住宅ローンの返済が滞ってしばらく経つと、その物件は任意売却か競売をすることになりますが、所有者が売主として通常と同じように売却できる任意売却においては、多くの場合が債務超過に陥っていますし、売主の債務状況を鑑みると手付金等を保全した方が良いことが多いです。
実務上の保全措置
手付金等を第三者機関で保全をするのには費用が発生したり、契約締結の10営業日前までに申請をする必要があったりと、契約行為の障害になることもあります。
そのため実務上、
売主が宅建業者の場合は、手付金の保全処置をしなくてよい額を上限にし、
個人が売主の場合は、契約の場でいったん売主買主間で手付金と領収書の授受を行い、仲介業者が預かり証を発行して売主から手付金を預かって自分たちで保全をする、ということを行ったりします。
仲介業者が預かる場合、引き渡しまでの間に仲介業者が倒産しないとも限らないので、特に金額が大きな場合には信用のできる仲介業者を選ぶようにしましょう。
いずれにしても手付金の預かりは売主買主合意の元で、適切な条件をあらかじめ定めた上で行われるため、不明点があれば契約前に仲介会社などに相談するようにしてください。
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