北向きの土地は建築に有利?家を建てやすい土地の形状について

ノウハウ・豆知識
この記事は約6分で読めます。

土地を買うなら南向きで間口広々がいい!北向きの土地は暗いから嫌だ!

という方は多いですが、そんなに都合よく南向きの土地は売りに出ないのと、特に敷地面積に余裕の少ない都市部においては、建築の観点から南向きで間口が広すぎるのも考え物なんです。

土地には建物を建てやすい形状や向きというものがあり、もしかすると思い描いている理想の家は南向きの土地には建てられないかもしれません。

むしろ北向きの土地の方が理想的なケースもあります。

今回は特に戸建て用地の代表格である、第一種低層住居専用地域と第一種中高層住居専用地域を対象に、家を建てやすい土地の特徴について解説していきます。

スポンサーリンク

■建物が建てやすい土地の特徴

低層住居専用地域や中高層住居専用地域では、建物の高さ制限以外にも各種斜線制限日影規制(日照権の関係)などの制限が建築に大きく影響します。

細かい部分は説明を省きますが、これらの制限を考慮すると、土地の向きや形状によって建物の建てやすさが変わることが分かります。

北向きの土地

斜線制限の中で一番メジャーなのが北側斜線制限といって、南側の家への日照を確保するための制限です。

北側の屋根が斜めになっている一戸建てがあれば、北側斜線制限の影響を受けていると思ってください。

第一種,第二種低層住居専用地域では、北側の隣地境界線から上に5mの場所から1:1.25の勾配で伸びる斜線の上側エリアには建物を建築できないことになっています。

中高層住居専用地域にも北側斜線制限がありますが、重ねて日影規制が適用されると北側斜線制限の対象外になります。市街化の進んだ地域では全ての用途地域に日影規制が適用されています。

北側斜線は北側隣地との境界線からスタートしますが、北側が道路になっている北向きの土地では
敷地と反対側の道路境界線からスタートする
ことになっています。

道路には日照を確保しなくてもいいよね、という考えです。

北向きと南向きの土地の斜線制限の違い
南向きと北向きの土地の斜線制限の違い

敷地が南北方向に長い

これも北側斜線制限を受けづらくなる要素です。

前述の通り、北側斜線は北側隣地から南向きに伸びてくるため、南北に長い敷地であれば、北側境界から建物を離して建てることで建物の屋根が削られず、天井高の確保がしやすくなったり、スクエアな形状の建物を建築しやすくなります

土地の面積が同じであれば間口と奥行きは反比例するわけなので、南向きで間口が広すぎると横から見た時に建物が鋭利に尖った形になってしまう…ということにもなります。

またこの原理からすると、西向きや東向きの土地で間口がドーンと広く南北に細長い土地でも北側斜線を受けづらいので、建築には有利と言えます。

土地が南北方向に長いと北側斜線をかわしやすくなります

道路が広い

道路には日照を確保しなくてもよいと言いましたが、明るくて良好な街並みを守るために道路にも日照を確保する制限として、道路斜線制限というものがあります。

道路斜線制限は、道路の反対側の境界から1:1.25の勾配で斜線が伸びてきます。

道路が狭いと建物が削られてしまいますが、広い道路であれば斜線の始まりが建物から離れるため、道路斜線制限の影響が小さくなります。

道路が広いと道路斜線制限を受けづらく、建物が建てやすくなります

間口が4.8m程度以上

間口の広さの基準については都市部と地方とで分かれるでしょう。

地方では間口は8m以上~などと言われることもありますが、住宅が多く地面が少ない都市部になればなるほど、土地の一般的な間口は狭くなっていきます。

建物の寸法では間(けん)という単位を用いることが多いです。

1間は1.81m(畳の長手の長さ)で、建築の目線では、建物の幅が壁芯で2間あると作りやすい(生活しやすい家が設計できる)と言われています。

日本の家具を置く場合は0.5間単位(畳の短手)で設計すると収まりが良いとされています。

設計士が使う方眼用紙の1マスも、0.5間の扱いになっています。

民法の決まりとして、建物は隣地境界線から50cm離して建築するようになっているため、幅2間の建物を建築するには、
1.81m×2+0.5×2+0.2m(壁厚)=4.8m程度以上の間口があれば、建物を建築しやすいことになります。

50cmの離れはあくまで民法で決められているだけなので、隣地の承諾があれば隣棟間を30cm程度まで近づけることができます。

両隣から承諾がもらえれば、合計で40cm分間口が狭くても2間の建物が建てられることになります。

ガレージが欲しいなら地盤が上がっている土地

盛り土がされていて道路よりも宅盤が上がっている土地があります。

このような土地は土留めや基礎の工事費用が大きくなる一方で、1階を道路面より高い場所にしたいときや、ビルトインガレージを設置する場合などに有利です。

なぜかというと、建物の絶対高さ制限は土地の基準面(GLゼロ)の地点から10mという意味ですが、宅盤が上がっている土地の基準面は道路からではなく、盛り上がった土地の上側になります。(正確には高低差測量によって決まる)

ゼロ地点を設定した後に盛り上がっている土地を削れば、削った分だけ高さが稼げますし、削らなくてもゼロ時点は道路よりも高い位置にあるため、玄関まで階段を上るような家が設計できます。

また、より大きく宅盤が上がった土地では、盛り土されている部分を地下扱い(見た目は1階)のビルトインガレージにして、上に2階建てを建築することも可能です。

■建ぺい率の緩和が受けられる土地

角地緩和

角地に建物を建てる場合、建ぺい率を10%緩和するという角地緩和が利用できることがあります。

条件として道路が通行しやすいように角部分を道路上にして隅切りするなどの条件がありますが、建ぺい率が10%増えることは大きなメリットです。

例えば60%/150%の地域で2階建てを建築しようとした場合、本来は建ぺい率いっぱいに建築したとしても60×2=120%分の床面積しか取れないところ、10%の緩和を受けることで70×2=140%もの床面積を取れることになります。

土地が100㎡なら20㎡(12帖!)も床面積が増やせると考えるとすごいですよね。

▼角地緩和についてはこちらの記事をご覧ください▼

防火地域か準防火地域

防火地域内に耐火建築(鉄筋コンクリート造)を建てる場合、準防火地域内に準耐火建築・耐火建築を建てる場合は、建ぺい率が10%緩和できるようになりました。

準耐火建築は木造でも大きなコストアップをせずに建築可能なので、敷地の有効活用の為にもぜひ検討したいところです。

防火地域は主に幹線道路沿いや商業用地が該当します。
防火地域で建ぺい率80%の角地の場合、耐火建築と角地の緩和により建ぺい率は100%になります。

■まとめ

一見好条件な土地でも、思ったより建物が入らないことがありますが、それには土地の形状や向き、道路の広さなどが影響しています。

建物の形、天井高、床面積を優先したい場合、南向きや間口が広い土地は相性が悪いケースもよくあります。

南向きの土地じゃなかったとしても、プランの工夫で陽当たりを確保できれば、むしろ南向きの土地よりも良い家が建つこともザラです。

最初から条件を絞りすぎず、いろいろな土地を検討してみるようにすれば、可能性が大きく広がると思います。

スポンサーリンク
役に立つ記事だと思われたらぜひシェアしてください!
筆者が運営するSNS/購読設定

コメント

タイトルとURLをコピーしました