不動産屋から物件紹介用の図面が届いたけど、物件の住所が書いていなくて、わざわざ聞かないといけない。
そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?
「ご検討ください」「興味あればご案内します」と言われても、そもそも周辺の様子や立地が分からないのに検討できないでしょ!
検討できるかどうかも分からない物件のために、限られた時間と労力を費やしたくない!
というご意見もごもっともです。
住居表示を隠すことはお客様満足度を下げることに繋がりそうですが、不動産会社はなぜ住居表示を隠しているのでしょうか?
■住居表示を教えない理由
・お客様との接触機会が欲しい
営業のホンネではこれが一番ではないでしょうか。
普段反応のない顧客から住居表示の問い合わせがきたり、そこから実際に現地見学に繋がれば、顧客と接触して関係を築けるチャンスが生まれます。
100往復のメールよりも1回の案内の方が様々な情報を交換できますし、自分を知ってもらうためにもまず顧客と会うためにどうするかを考えた結果、一部の情報を伏せるという行動になるわけです。
・トラブルの防止
住所が書いてある図面が手元にあれば、近くを通りかかったときなどにちょっと立ち寄ってみたくなりませんか?
現地を実際に見てもらえるという意味では不動産会社にとっても売主にとってもプラスな気がしますが、稀にお客様が敷地内や私道に勝手に入ってしまったり、居住中の物件にも関わらず外からジロジロと見てしまって売主さんが気持ち悪い思いをすることがあります。
また万が一物件(植木鉢等含め)を傷つけられるようなことがあっても、情報を拡散してしまっていると犯人を見つけることができず、仲介業者の責任問題にもなりかねません。
そのため更地や空室物件ならまだしも、居住中の物件や周辺敷地の権利関係が複雑な物件では、ある程度顧客のコントロールができるように住居表示を伏せて、自分立ち合いの元で見学してもらうようにします。
・市場の評価を確認している
住居表示を隠していると、他社やお客様から住居表示の確認がきます。
しかし売買代金が相場より遥かに高いなど条件が良くない物件は、一般顧客はもちろん不動産屋もお客様へ紹介したくないため、問い合わせがなかなか来ません。
このようなことから、物件担当者はあえて情報を全て開示せず、他社からの問い合わせ件数から「市場からの注目度」を測ることで、今後の販売計画や売主への報告・提案の参考にすることがあります。
・他社の飛び込みを防ぐ
住居表示を一般に公開してしまうと、両手仲介を狙う他の不動産業者が売主へ直接訪問(飛び込み)して大問題に繋がる危険が高まります。
これは少なくとも媒介業者にとっては不利益でしかないため、容易な飛び込みを防ぐため、また飛び込まれたとしてもどこの業者が飛び込んだか特定しやすくするために、問い合わせをしてこないと物件の所在が分からないように販売図面に住所を記載しないようにします。
・他社への情報の漏洩防止
不動産を探している顧客は複数の不動産会社と付き合っていることがほとんどで、自分の預かり知らないところでは
こんな物件出たけどどうですか?
実はA社から紹介された未公開物件を検討していて…
それウチでも紹介できるかもしれません。どんな物件ですか?
これなんですが…
と、こんなやり取りがされていることも少なくなく、口外しないようお願いをしていても防ぎきれません。
お金と時間を費やし苦労して獲得した未公開物件がこんな簡単に他社へ流通してしまっては大損ですし、中には売主の事情で水面下で販売活動を行わないといけない物件もあり、他業者から横槍を入れられると破談になる危険も大いにあります。
機密性の高い物件ほど、メールや電話越しに安易に詳細を伝えたくないというのが物件担当者の気持ちであり、会社と売主を守るための戦略でもあります。
■良い物件は労せず手に入らない?
「実際に見てみないと分かりませんよ」と言われても、まずはGoogleストリートビューを見て良さそうなら見学したい、という人は少なくなく、気持ちもよく分かります。
しかし「まずは現地を…」というのは、決してお客様と接触するためのセールストークだけではありません。
ストリートビューでは道路が狭そうだったけど実際には狭くなかった。
隣地に古い家があって雰囲気が悪そうだけど現地に行ってみたら新しい家に建て替わっていた。
陽当たりが悪そうだったけど実際には全然暗くなかった。
などということは日常茶飯事ですし、
良さそうなのに実際には全然良くなかったという逆も然りです。
便利なツールによりオンラインでの情報収集が容易にできるようになった反面、画面越しの情報だけで判断してしまって良い物件を逃してしまっていることもあるように思います。
”不動産は衝動買いに近い”と言われ、実は現地で感じる音や匂い、空気感という感覚や直感が意思決定の大きなウェイトを占めています。
幹線道路や線路沿いで騒音が大きいなど、明らかに希望に合わない場合を除いては、良い物件を見落とさないためには、できる限り現地に足を運ぶことをお勧めします。
また不動産会社の営業担当者は、顧客の貴重な時間と労力をいただいているということを重々自覚し、会うからにはそれ相応の価値を提供する覚悟を持つべきだと思います。
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