”囲い込み”の現状と予防策

【裏側】
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もはや不動産業界の伝統芸とも言える「囲い込み」

主に媒介業者が”両手契約”をしたいがために行われる手法で、場合によっては売主の利益を損なう行為です。

今回は囲い込みの実情について解説します。

囲い込みとは

媒介業者は売主から仲介手数料をもらえますが、買主を自分で見つけられたら買主からも仲介手数料がもらえるので、一件の取引で手数料が倍になります。

この”両手契約”がしたいがために、他の業者からの問い合わせがあっても
「もう申し込みが入っている」
「売主さんが忙しくて内覧は1か月後から」
などと色々な理由をつけて他業者の介入を妨害する行為を囲い込みと呼びます。

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■囲い込みの現状

囲い込みが問題視されるようになって久しいですが、今でも囲い込みや実質的な囲い込み行為は
大手不動産会社でも普通に行われているのが現状です。

会社の色や体質よりも、結局は営業担当者の性質によるところが大きいです。

特に2021年、都心部の不動産需要が急増し売却物件が不足したときは囲い込みがあまりにも多すぎて、それはもう悲惨な状況でした。。。

そもそも紹介させてもらえない。

専任なのにレインズに登録されていない。

案内させてもらえても、こちらは満額で申し込みを入れて契約の準備まで完璧に整えているのに、なんだかんだと理由をつけて1週間2週間3週間と引っ張られて、その間に自分のところのお客さんで申し込みを入れてそっちで契約する、なんてことが何回も続きました。

もはや番手や購入条件に意味はありません

こちらの申し込み書は売主さんへ届いていなかったでしょう。
(もし届いていたら、早くて確実性のあるこちらのお客さんで契約したいと思うのが売主さんの気持ちでしょう)

こちらのお客さんは当然納得できませんし、売主さんの仲介会社は早期売却、高額売却という売主さんの利益を損う一方で仲介手数料を2倍得る。

売主側仲介の一人勝ちな状況が続きました。

■囲い込みは業法違反じゃない?

え?当たり前に違法行為でしょ?と思われがちですが、
実は囲い込みすること事態は業法違反になりません。

宅建業法上、媒介業者は「成約できるように積極的に努力しないといけない」とされているだけで、
囲い込みについては明記されていません。

行政の見解的には「売主の承諾があれば他業者からの問い合わせや案内を拒んでもいいです」ということらしいので、囲い込み=違法とは限らないのです。

ただし、以下のような場合には囲い込みが違法になります。

■こんな囲い込みは違法

宅建業法違反

前述のとおり、囲い込みが許されるのはあくまでも売主の承諾があった場合のみなので、承諾のない囲い込みは違法です。

また、専任・専属専任媒介の場合は、仮に売主の承諾があったとしてもレインズへ登録しなかったら違法です。

レインズ規約違反

レインズに登録していても、売主さんの承諾なしに他業者からの問い合わせに応答しなかったり物件を紹介しない場合は、レインズの規約違反として注意・勧告・戒告などの対象になります。

媒介契約違反

媒介契約書には、媒介業者が誠実に売却活動や報告をする義務が明文化されています。

囲い込みをする業者は、他業者からの案内依頼や購入申し込みを勝手に握りつぶして売主に告げていないことがほとんどです。

それは故意に報告をしなかった、不実の報告をしたことに繋がるので、媒介契約の解除条件を満たすことになります。

■囲い込みをされないためにはどうするか

囲い込まれている、申し込みを握りつぶされている、という事実に売主が気づくのは、究極的に言えば不可能です

ただし、以下のような方法で多少なりとも囲い込みによる不利益を防ぐことはできるかもしれません。

一般媒介で複数社に依頼する

一般媒介でライバルの業者がいる状況では、自分経由で成約してもらわないと手数料がもらえないため、物件を囲い込むことがデメリットでしかなくなります。

そのため一般媒介であればほぼ間違いなく”他業者へ紹介しない”ということはなくなります。

ただし、売れ筋の物件であれば一般媒介でもすぐに買い手は現れますが、窓口が増える煩わしさがあるのと、専任の方が広告活動にお金をかけやすいということもあるので、媒介契約の特性を理解して判断が必要です。

▼媒介契約の種類と特徴はこちら▼

登録証明書をもらう

レインズへ登録をしたときは、売主へレインズの登録証明書を渡すことが義務付けられていますが、あえて「レインズへ登録されたら登録証明書を送ってくださいね」とジャブを入れておくことで、「この人は何かで勉強している(囲い込みも警戒している?)」と思わせることができれば、業者も背筋が伸びるかもしれません。

登録証明書をもらったときに、物件の販売状況が「公開」というステータスになっていることを確認しましょう。

また登録証明書には、売主が物件の登録状況を確認するためのログインIDとパスワードも書いてあります。

悪質な業者は、一旦レインズへ掲載して登録証明書を発行した後に掲載を落としたり、価格変更をすぐに反映しなかったりということもするので、ときどき登録状況を確認しておくといいと思います。

販売用の図面もチェックする

仲介業者にレインズに掲載する販売用の図面をもらうよう依頼します。

これも物件のPRポイントなどが書かれているか、雑な販売図面じゃないかなど細かくチェックすることで、仲介会社に「細かい部分も見られている。下手なことをすると後々トラブルになるかもしれないな」と思わせる効果はあると思います。

囲い込みしないでほしいと伝える

営業担当者の性格にもよりますが、直球で「周りからよく聞くけど、御社は囲い込みとかはしないですよね?」というのも意外と効きます。

万が一この程度で逆ギレしてくる担当なら、どのみち先はないと思うので切ってしまってもいいかもしれません。

ノルマに追われている会社(営業担当者)を選ばない

囲い込みをする理由は”売上“と”集客“の2点につきます。

営業担当も当然人ですから、自分に余裕がない状況下では色々な魔が差すこともあります。

元気がなかったり焦りが伝わってくるような、言い方は悪いですが、売れなさそうな雰囲気の営業マンに売却を任せないというのも手です。

まとめ:営業担当と売主の信頼関係が命

特に不動産の売却では、売主と仲介会社の連携、信頼関係が命です。

当然売主の立場からすれば囲い込みをしてほしくないところですが、仲介会社もある程度商売でやっているので、チャンスがあるならより利益を高めたいと思うことも、言ってしまえば自然なことです。

前述のような予防策も伝え方や相手を考えないと、「こちらを全然信用していない」「嫌な客」と思われる可能性もあり、信頼関係がない状態でスタートすることになりかねません。

売主の権利として主張するべきことはしつつ、仲介業の仕組みや背景を考慮した関係づくりが必要になると思いますし、仲介業者は売主さんの利益や気持ちを最優先に考え、不安を感じさせないよう真摯に向き合うことが大切です。

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