毎月引き落とされるマンションの管理費ですが、
国土交通省が約5年に一度行っている『マンション総合調査(平成30年)』によると、
全体平均で約23%もの管理組合が、所有者の管理費滞納についてのトラブルを経験していると回答しています。
実際、不動産の仲介を行うための調査で管理会社から『重要事項の調査報告書』を取り寄せてみると、
築後数年が経過していてある程度の戸数があるマンションで、管理費や修繕積立金の滞納が一切ないマンションはとても珍しいです。
日ごろから支払い関係の滞納をしないように気を付けている人にとっては驚きの事実かもしれませんが、実はそれほどまでに管理費の滞納はありふれている話なのです。
それでは、管理費の滞納を続けるとどういったことが起こるのでしょうか?
【時系列】滞納によって起こること
・滞納翌月
決められた期日に管理等の引き落としができていないと、まずは管理会社から催促の連絡が来ます。
口座への入金忘れや口座変更手続きの不備などから引き落としができなかったということはよくあるので、ここで支払えば特にお咎めもなく、個人信用情報に傷がつくこともないようです。
・滞納から数ヵ月
管理会社からの催促を無視したり、連絡が取れない状況が続くと、管理会社は弁護士に相談したり、管理組合に情報共有したりと、催促に力を入れるようになります。
またこの頃になるとマンションの住民間にも滞納している事実が広がっていきますが、
管理費や修繕積立金はマンションの健全な維持管理に欠かせない費用のため、ちゃんと支払っている住人からしても気分の良い物ではありません。
そのため未払いの状態が続くと日常生活で居心地の悪さを感じることが増えるかもしれません。
・数ヵ月から数年
管理会社からの催促の連絡の他、内容証明などで催告が届くようになります。
催告は裁判所などを通さずにでき、催告を行う事で後述する時効が一時的に中断されます。
・数年から5年
弁護士と裁判所を通した支払催促が届きます。
内容証明は法的な強制力のあるものではないので無視してしまえばそれまでですが、支払催促は法的な支払いの命令です。
これを無視し期日までに異議申し立てがない場合は、訴訟、財産の差押え、判決に基づく強制執行や競売、ということになります。
ここまでくると滞納額のみならず、弁護士費用や各種申し立ての費用として相当額の請求をされることになります。
●未払いには時効がある
実は管理等の未払い金には5年の時効があります。
しかし現実的にこの時効が成立することはまずありえません。
前述の通り催告によって時効は中断しますし、裁判所への申し立てをわざわざ時効まで待ってくれることはありえないからです。
時効まで逃げ切るというのは不可能に近いと思いましょう。
また、滞納しても5年間は猶予があるというのは間違った認識です。
あくまで最大で時効が成立する5年までは猶予があるかもしれないというだけであって、
債権者が早くに訴訟を起こせば滞納から2年や3年でも競売になる可能性はあります。
■延滞すると利息が発生する
管理規約をよく読むと、管理費等の支払いが遅延した場合には、
未払い金に年15%ほどの利息を付けることや、遅延損害金として請求に係る弁護士費用などの諸費用を請求できることが記載されていたりします。
筆者の経験として、数年間滞納を続けていた所有者が亡くなってしまい、相続や売却の手続きに時間を要した結果、
遺産分割が完了する頃にはもともと200万円ほどだった未払い金が、
利息や弁護士費用等により500万円以上に膨れ上がっていた、ということもありました。
■最終的には
裁判所を通した法的請求を無視し、未納の状態が続けば、
最終的には資産の差し押さえや不動産が競売によって強制売却させられることになります。
競売になると通常の売却よりも大幅に安く売られてしまいますし、
当然強制的に立ち退きさせられることになります。
もし経済的事情から支払いが困難な状況なのであれば、
督促の無視だけは絶対にせず、
少しだけでも支払うことで支払いの意思を見せたり、管理会社や管理組合に相談をするなどすることで、競売などの法的処置は避けられるかもしれませんし、
任意売却などにより競売よりも高く不動産を売るという手段を取ることもできます。
いずれにしても時間が経てば経つほど利息により支払額が雪だるま式に大きくなり、
取れる選択肢もどんどん減ってしまうので、支払いに困ったらできるだけ早くに相談するようにしましょう。
【裏ワザ】管理費よりも優先すべきもの
もしも一時的に金銭的に困窮してしまったら、
管理費よりも、住宅ローンと税金の支払いを優先することをお勧めします。
前述の通り、管理費等は数ヶ月、数年単位で滞納しても差押えまではなかなか至りませんが、
住宅ローンは滞納から約半年で競売が見えてきますし、
税金は納付期限の20日後に催促状が届き、そこから10日ほどで財産の差押えに入るというスピード感です。
また、最悪自己破産をすることになっても、滞納した税金の債務は消えません。
そのため一時しのぎではありますが、経済的に苦しいときには、
管理費の支払いを後回しにするというのも生活を守るための一つの手段です。
ただし管理会社や組合に事情を説明するなど、誠意のある対応を心がけたいものです。
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