「容積率200%だと思って問い合わせをしてみたら、幅員制限で160%までしか建てられないと言われた」なんてことはよくあります。
土地の容積率は都市計画で上限が決められていますが、前面道路の幅員が12m未満の場合は、容積率が小さく制限されることがあります。
この記事を読むと、
①不動産広告に記載された道路幅員から容積率を計算できるようになります。
②道路が4m未満の時の容積率がどうなるか分ります。
③容積率の異なる複数の用途地域にまたがる容積率の計算方法が分かります。
■道路幅員による容積率の制限ルール
例えば幅4mの道路沿いに500戸あるタワーマンションを建てられるとしたらどうでしょうか?
天災や火災で避難が必要になったとき、十分な数の緊急車両が近づけないばかりか、道路が狭くて避難が遅れる危険があることが容易に想像できるかと思います。
また、狭い道路に高層の建物が立ち並ぶと、良好な街並みが阻害されることも懸念されます。
このようなことから、幅12m未満の道路に接道している土地では、都市計画上の容積率を上限としつつも、
道路幅員(m)に特定の割合を乗じた数値を容積率の上限とすることになっています。
上記の表を見ると、~住居地域などの『住居系』区域では原則として0.4%を乗じ、
商業地域系や用途地域が指定されていない『商業系』区域では原則として0.6%を乗じることになっていることが分かります。
・計算例
①第一種低層住居専用地域内(容積率150)で、前面道路幅員が4mの土地の容積率
4m × 0.4 = 1.6(160%) > 150%
都市計画で定められた150%の方が小さいので、この土地の容積率は150%が上限です。
②第一種中高層住居専用地域内(容積率200%)で、前面道路幅員が4mの土地の容積率
4m × 0.4 = 1.6(160%) < 200%
算出した160%の方が小さいので、この土地の容積率は160%が上限です。
③準工業地域内(容積率300%)で、前面道路幅員が4mの土地の容積率
4m × 0.6 = 2.4(240%) < 300%
算出した240%の方が小さいので、この土地の容積率は240%が上限です。
・複数接道の場合はどちらの道路をもとにする?
角地などの複数の道路に接道している場合は、接道している道路の広い方の道路幅員をもとに計算することができます。
ただし、あくまでも建築基準法上の接道義務を果たしている道路であることが前提のため、通路や接道部分が2m未満の道路の幅員は、容積率の計算に使うことができません。
・セットバックしても幅員4m未満の場合はどうなる?
セットバックは建て替え時に行うことになっているので、古い戸建てが立ち並ぶ道路では、一方の土地がセットバックしても道路向かいの家が建て替えをするまで、道路幅員が4m未満であることもあります。
それでは後から建て替えた方が容積率的に有利となってしまうため、二項道路(幅員4m未満の建築基準法上の道路)に面した土地の場合は、仮にセットバック後の道路幅員が4m(or 6m)未満でも、道路中心線から2m(or 3m)のセットバックをすれば、道路幅員4mとみなして容積率の計算をすることができます。
・複数の用途地域にまたがる場合
複数の用地域にまたがっている土地の容積率の計算は、それぞれの面積割合に応じて加重平均で計算することになります。
例えば以下のような150㎡の角地で、100㎡部分が容積率400%、50㎡部分が容積率200%の場合で計算してみます。
第一種住居地域部分は4mの道路に接道していますが、ひとつの土地として建築するので接道幅員は6mになります。
①近隣商業地域
道路幅員による制限 → 6m × 0.6(商業系) =360%
建築可能床面積1 = 100㎡ × 360% = 360㎡
②第一種住居地域
道路幅員による制限 → 6m × 0.4(住居系) =240%>200%
→200%
建築可能床面積2 = 50㎡ × 200% = 100㎡
敷地全体の建築可能面積 = 360㎡ + 100㎡ = 460㎡
敷地全体の容積率 = 460㎡ ÷ 150㎡ = 306.66%
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