一つの土地に複数の用途地域が存在する土地の事を『用途またぎ』などと呼びます。
建ぺい率/容積率、高さなどの建築制限、用途制限などは用途地域(都市計画)によって違いますが、複数の用途地域が重なっている土地の場合、各規制はどうなるでしょうか?
この記事を読むと、用途またぎの土地の
①容積率と建ぺい率の計算方法が分かります。
②角地の防火地域など特殊な土地の建ぺい率の計算方法が分かります。
②高さ制限、斜線制限がどうなるか分かります。
③建築できる建物の種類が分かるようになります。
■建ぺい率と容積率
複数の用途地域にまたがる土地の建ぺい率と容積率は、各用途地域に該当する土地の面積割合で按分する加重平均という方法で計算することになります。
例えば下図のような用途またぎの角地の建ぺい率と容積率はどうなるでしょうか?
※簡単のため道路幅員による容積率制限は加味しません。

計算手順は以下の通りです。
↓
①近隣商業地域内
建築可能面積=100㎡×80%=80㎡
建築可能床面積=100㎡×400%=400㎡
②第一種住居専用地域内
建築可能面積=50㎡×60%=30㎡
建築可能床面積=50㎡×200%=100㎡
③敷地全体
建ぺい率=(建築可能面積(80㎡+30㎡)÷敷地面積150㎡)×100%+角地緩和10%=83.3%
容積率=(建築可能床面積(400㎡+100㎡)÷敷地面積150㎡)×100%=333%
角地緩和を使う場合の計算方法は原則として、面積按分で算出した建ぺい率に+10%することになります。
ただし、次のような特殊な例外もあります。
・防火地域の角地に耐火建築物を建てる場合の建ぺい率

耐火建築=鉄筋コンクリート造、それ以外=木造、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
『防火地域内の建ぺい率80%の土地に耐火建築物を建築する』場合、建ぺい率の制限がなくなり、敷地の100%まで建築できることになっています。
面積の割合によっては前述のように面積按分で算出した建ぺい率に+10%をすると建ぺい率が100%を超えてしまう可能性が出てくるため、建ぺい率の計算方法が変わります。
※2019年以降、準防火地域内に準耐火建築物・耐火建築物を建築する場合も建ぺい率+10%の緩和が適用できるようになりました。
詳しくはこちらの記事をご覧ください▼
①近隣商業地域内
建築可能面積=100㎡×100%=100㎡
②第一種住居専用地域内
建築可能面積=50㎡×(60%+耐火建築の緩和10%+角地緩和10%)=40㎡
③敷地全体
建ぺい率=(100㎡+40㎡)÷150㎡=93.3%
このように、通常の建ぺい率の計算方法と変わるので注意が必要です。
■防火指定はどうなるか
複数の防火指定の地域にまたがる土地では、最も厳しい防火指定が適用されます。
前項の土地のように『防火地域』と『準防火地域』にまたがって建物を建てる場合は、最も厳しい防火地域の規制が適用されることになります。

ただし、用途境に延焼防止のための防火扉を設けることで、それぞれの用途地域内の防火指定に従って建物を建築することが可能です。
鉄筋コンクリート造などの防火構造にすると木造建築よりコストが大幅に上がるため、防火扉で区切ることで木造で建築できる部分ができれば、建築コストを抑えることができるかもしれません。

■建物の用途
住居、飲食店、工場など、用途地域によって建築できる建物の用途が定められています。
複数の用途地域にまたがる土地に建てられる建物の用途は、
過半を占める用途地域の制限によって決められます。
■高さ制限や斜線制限
北側斜線制限、絶対高さ制限などの各種建築制限は、それぞれの用途地域内で個別に適用されます。
仮に敷地の過半が、高さ制限や北側斜線制限のない近隣商業地域などであっても、またがっている用途地域が低層住居専用地域であれば、低層住居専用地域内の敷地では高さ制限や斜線制限を守って建築しないといけません。
■補足:不安なときは建築審査課へ
建築に関わる建ぺい率や容積率の相談先は、役所の建築審査課です。
ビルやホテルなどの大規模建築物であれば都庁や県庁の建築審査が担当することになると思いますが、一戸建てなどの中小規模の建築物であれば、各区市町村役場の建築審査課に相談しましょう。
今回の建ぺい率の例題のように、角地+防火地域+耐火建築+2つ以上の用途またぎなど、条件が複雑な土地の場合は、念のため確認することをお勧めします。
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