広いバルコニーを建築面積に算入させない裏ワザ

ノウハウ・豆知識
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建築のルールとして、バルコニーは「壁から突き出した部分で1mを超える部分は建築面積に算入する」ことになっています。

つまり奥行き1m未満のバルコニーであれば建築面積に算入しない=室内の広さを犠牲にしなくてすむ、ということで、多くの戸建てでは室内空間を優先しバルコニーの奥行きを1m以下に設計しています

「バーベキューができるような広いバルコニーが欲しいけど、室内の広さは犠牲にしたくない!」

そんなときに検討したい、グレーチングバルコニーというものをご存じでしょうか?

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グレーチングバルコニーとは

バルコニーとは、住戸から突き出た専用の屋根を付けない(青空天井の)スペースのことで、屋根が付いているものはベランダと呼びます。

バルコニーの中でも、床部分が網目状になっていて、バルコニーの下の地面が見えるようになっているものを、グレーチングバルコニーといいます
つまり地面から見上げた時にバルコニーを貫通して空が見える状態になっています。

LIXILのグレーチングバルコニー
©LIXIL

このグレーチングバルコニーの最大のポイントは、条件を満たせば最大で奥行き2mまで建築面積に算入しないという点です。

面積不算入の条件

地域によって条件に差がありますが、例えば世田谷区の場合

1.適当な隙間(目透かし)があること。

2. 奥行きはバルコニーの端(手すり、壁、目隠し、下階の柱がある場合はその端)から

外壁の柱芯まで2メートル以内であること。

3.バルコニーの下部は外気に有効に開放された、壁を有しない部分が周長の1/2以上で

あること。

4.バルコニー(手すり、壁、目隠し、下階の柱がある場合はその端)は隣地境界線から

有効50センチメートル以上かつ建物間(梁等も含む)で有効1メートルの距離を有

すること。

5.手すり、目隠しの高さはバルコニー床から2メートル以内であること。

6.バルコニー上部及び下部は、雨仕舞いに必要な最小限(45センチメートル以下)の

庇・軒先のみであること。

7.面積は建築面積の10分の1以下であること。(建築物が複数ある場合は、一の建築物

の建築面積とする。)

世田谷区 スノコ状のバルコニーの建築面積について【第3版】 (平成30年6月26日 施行
世田谷区グレーチングバルコニーの適用条件
世田谷区のグレーチングバルコニーの適用条件図

上記の要件を満たせば、建ぺい率/容積率に影響しない奥行き2mまでの広いバルコニーを付けることができます!

ちなみにお隣の目黒区の場合は、手すりの高さは1.3m以下、戸建てに限定、1建物に一箇所のみなど、条件に大幅な違いがあるため、各自治体のホームページなどで確認するようにしましょう。

グレーチングバルコニーをめぐるトラブル

バルコニーが広いというのはそれだけで物件の価値が高まるため、2016年頃までは建売業者がこぞってグレーチングバルコニーを採用していました。

しかし本来床が網目状になっていないといけないところ、建物引き渡し後にホームセンターなどで買ってきた床材を置いて、実質的にバルコニーとして利用されるケースが後を絶たず、売主業者と仲介業者も「引き渡し後にご自分で床を張る方もいますね」などと暗に“そういう使い方ができます”という営業トークをしていました。

これが近隣トラブルのもとになったり、しばしば違法建築じゃないかと行政に通報が入るようになったため、グレーチングバルコニーを利用した抜け道の取り締まりが厳しくなり、採用される建売住宅は一気に減っていきました。

建ぺい率の緩和でグレーチングが不要に?

2019年に建築基準法の建ぺい率について大きな改定がありました。

これまで「防火地域で耐火建築をする場合は建ぺい率を10%緩和できる」というルールがありましたが、適用の条件が追加され、

「準防火地域で準耐火以上の建築をする場合」も建ぺい率が10%緩和できることになりました。

準防火地域で木造3階建てを建築する場合は準耐火建築か耐火建築にすることが義務付けられているため、無条件で建ぺい率が緩和されることになります。

木造2階建てでも、数万円から10数万円程度のローコストで準耐火建築にすることで建ぺい率の緩和を受けられるため、非常にコスパが大きいです。

住宅が密集している地域はほとんどが準防火地域で、多くの建物が10%の緩和を利用できるようになり、広いバルコニーと室内空間の両立がしやすくなったことも、あえてグレーチングバルコニーを採用する戸建てが減った一因のようです。

グレーチングのメリットは他にも?

建ぺい率/容積率のことを差し置いても、グレーチングバルコニーには階下に光が届くという大きなメリットがあります。

例えばロの字コの字の戸建てで中庭空間がある場合、通常のバルコニーでは階下が暗くなってしまいますが、グレーチングバルコニーであれば光が透過されるので、庭や一階部分が暗くならずにすみます。

住宅展示場のモデルルームなどでも採用されていることがありますが、体感できる効果は絶大です。

また、建物内の廊下にグレーチングを採用することもあります。

特に住宅密集地では、土地の向きや周辺建物との位置関係からどうしても1階部分が暗くなりがちです。

2階の廊下をグレーチングにすることで2階に差し込む日光を1階まで届けることができ、明るさが一気に改善されます。

まとめ

一時は多くの建売戸建てに採用されていたグレーチングバルコニーは、規制の強化から採用率が下がりましたが、特に敷地に余裕が少ない地域ではまだまだ有効な手段です。

提供ルールには地域差があるため、ハウスメーカーとの打ち合わせのときに話を相談をしてみましょう。

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