以前からタワーマンションを購入することによる相続税の節税は富裕層を中心に人気があり、タワマン節税が報道で取り上げられることも多くありましたが、これが2023年で終わることがほぼほぼ確定的となりました。
2024年から施行されることになる可能性が高い、マンションの評価額の新たな算定方法と影響度合いについて解説します。
▼不動産が節税に有効な理由はこちらをご覧ください▼
■タワマンが節税に有効だった理由
市場価格・立地条件・床面積等が同じと仮定した場合、相続税対策では土地の持ち分面積が少ない方が課税標準額が低くなり有利なため、一戸建てよりもマンションの方が節税効果が高いのが一般的です。
そのマンションの中でもタワマンは
・1戸あたりの土地持ち分割合が極端に少なく、実勢価格と相続税評価額の乖離がより大きい。
・高層階と低層階の実勢価格差が建物評価額差よりもずっと大きい。(高層階ほど有利)
このような特徴があるため、これを上手く利用して(?)
「節税対策で不動産を買うならタワーマンションの高層階」というのが流行ったわけです。
その一方で、いきすぎた節税のみならず、節税目的で購入した所有者が実際には住まないことも多く、管理組合の機能が弱くなるという問題もはらんでいました。
■実勢価格との乖離率とは
今回のメス入れでポイントとなるのが、実勢価格(実際に売買取引される価格)と相続税評価額の乖離率です。
乖離率=実勢価格÷相続税評価額
乖離率についてはこちらの記事でも解説していますが、乖離率は首都圏ほど高く、地方ほど低い傾向にあります。
国税庁のまとめによると、一戸建ての実勢価格と相続税評価額の乖離率は平均で約1.66倍(評価額が実勢価格の60%)ほどというデータがあり、これは分かりやすく言うと、1億円の価値がある資産を6,000万円の価値として相続税を計算するということで、税率を掛ける課税対象額が単純計算で約4,000万円圧縮されることを意味します。
これに対して、例えばここ数年で実勢価格の上昇が著しく、タワマン街として有名な東京都豊洲エリアのタワマンでは、実勢価格1億円の住戸の相続税評価額が2,500万円程度(乖離率4倍以上!)というデータもあり、相続税の課税対象額が7,500万円も圧縮されるということなので、タワマンがこぞって節税対策に使われてきたのもうなづけるかと思います。
■新しい評価額の算定方式
新しい相続税評価額の算定方式は、この乖離率の上限を決めることで相続税評価額を実勢価格に近付けるというものです。
①乖離率が1.67倍以上の場合
相続税評価額=実勢価格×60%
(従来の相続税評価額×乖離率×60%)
②乖離率が1.67倍未満の場合
相続税評価額=従来の算定方式
1.67倍の根拠は、一戸建ての平均乖離率の平均が約1.66倍ということから、マンションと一戸建ての乖離率を揃えるという意味合いがありそうです。
これにより、前述の乖離率4倍の1億円のタワマンの例では、これまでは7,500万円も圧縮できていた相続税評価額が、4,000万円の圧縮に留まることになります。
また上記の新方式の適用によって、以前よりも相続税が高くなる物件は多数あれど、相続税が安くなる物件はないということが分かるため、実質的な相続税の増税ということになります。
■タワマンの実質増税は悪か?
不動産の相続税が現金資産などよりも低く設定されているのは、不動産が生活や事業における重要な基盤であり、生活に必要な物に重税を課すべきではないという考えからです。
「増税」と聞くとやはり面白く感じないのが我々国民ですが、もともとタワマンが優遇されすぎる仕組みだったことから、お金に困っていない一部の富裕層ほど大きな恩恵を受けられていたという「不公平感」が是正されると思えば、それなりに理解ができるのではないでしょうか。
(そう思いましょう…)
それに新方式が採用されたとしても、相続税の各種軽減の特例が備わっている不動産は、相続税対策として有効でありつづけることは間違いないでしょう。
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