マンションの内覧というと、どうしても目に見える室内のコンディションに注目しがちですが、他にも意外とチェックポイントは多いのです。
今回は仲介業者の筆者が、お客様をご案内するときに実は気にして見ているポイントについてご紹介するので、見学の時の参考にしてみてください。
■共用部
共用部の状況を見れば、管理がしっかりされているか、どういう人(年齢層や家族構成)が住んでいるのかが見えてきます。
・外壁の破損や極端な汚れ
マンションは管理費や修繕積立金を回収することで建物全体の維持管理をしていますが、中には積立金が不足がちになっているマンションもあります。
外壁の極端な汚れや破損があるにも関わらず補修がされておらず、次回の大規模修繕がまだ先の場合は、近い将来に補修の予定があるか確認します。
問題がありそうなのに修理予定なしということであれば、管理組合の会計上、工事費用の捻出が難しいまたは議論がされていない(管理組合が正常に機能していない)疑いもあるため、重要事項調査報告書や管理組合の議事録を読んだり、管理会社に実態をヒアリングするようにしています。
・掲示板の内容
オートロックの向こう側、メールコーナーやエレベーターの近くなどに、居住者向けのお知らせ掲示板があります。
この掲示板には、リフォーム工事が予定されている住戸の工事期間と音出しの有無、騒音やゴミ出しルールが守られていないなどの注意通達、大規模修繕工事の予定とスケジュールなど、マンションの管理体制や居住者のモラルが見えてくる情報がたくさんあります。
売主様側の仲介業者がいればアレコレと共用部を案内してくれますが、掲示板の前で立ち止まってくれる仲介業者は正直かなり少ない印象です。
案内をされるときに立ち止まって読んでも大丈夫なので、さっとでも目を通して気になることがあれば質問するようにしましょう。
・メールコーナーが綺麗か
実感として、メールコーナーが整然としているマンションは、管理体制が良いか、居住者の層が良い傾向があるように思います。
オートロックのある分譲マンションの多くではチラシの投函(ポスティング)が禁止されていて、ポスティング禁止の掲示もされていますが、それにも関わらず入りきらないポスティングチラシがメールボックスから溢れているようなマンションがあります。
ポスティング禁止を守らない業者は一定数あるわけですが、管理人さんがその都度注意してくれていたり、配布会社にクレームの連絡をいれるなど、しっかりと対処してくれているマンションではメールコーナーが整然としています。
また、チラシが溢れて美観を損なっているにも関わらずメールコーナーを放置している居住者に対しても、決して良い印象は受けませんよね。
旅行や出張で長期間留守にする人もいるので、そのようなマンションが必ずしも悪いわけではありませんが、管理体制、居住者の層が良いマンションは共用部が綺麗なことが多いです。
・ゴミ置き場
ゴミの捨て方や分別がちゃんとされているかも、管理体制と居住者のモラルを感じられるポイントです。
24時間ゴミ捨てが可能なマンションでも、ゴミの回収自体は週に1,2回なので、ゴミが溜まっている場合はやはり綺麗に捨てられているかを見たいところです。
・自転車置き場
自転車置き場を見ると居住者の世帯層が見えます。
子供がまだ小さいファミリー層が多いマンションでは、自転車に子供用シートがついている自転車が多いですし、単身者やDINKSが多いマンションではロードバイクが多いなど、如実に違いが出てきます。
空いているのは平置きなのか機械の二段式なのか、機械式なら出し入れが楽な下段が空いているのかなど、見学が終わって申し込んだ後になってから気になることもあるので、できればその場で質問しておくようにしましょう。
・廊下の状況
マンションの廊下部分や住戸への玄関アプローチ部は共用部で、緊急避難時の安全面の観点からも原則として私物を置くことが禁止されています。
しかし実際には自転車やベビーカー、植木鉢などが置かれていることも少なくなく、それらの行為を禁止するまたは許可する旨が管理規約に書かれていないことも少なくありません。
後々トラブルや安全上の問題が起こる可能性もあるため、共用部の使用実態について気になることを見つけた時は必ず売主さんや仲介業者、もしくは管理人さんに確認するようにします。
■専有部(室内)
基本的な室内のコンディション、故障不具合以外にも耳と鼻を使って確認している部分がたくさんあります。
・室内の臭い
他人様の家なので生活臭は必ずあります。
多くの場合は臭いを吸収した壁紙を交換してハウスクリーニングを入れればほぼ解決しますが、例えばゴミやペットの臭いが染みついているような住戸は、丁寧に住まれていないのかなと、少し警戒して細部まで気にして見るようになります。
また、排水溝系の臭いは空室の物件で長期間水を流していない場合に発生しますが、居住中にも関わらず臭いがする場合は排水管周りの故障も疑われるため、仲介業者や売主様に質問するようにします。
・環境音や外気の臭い
周辺道路の車両音、近隣学校のチャイムや子供の声などの環境音は、窓を開けないと分からないことが多いです。
また近隣に飲食店がある場合は、窓を開けると匂いが漂ってくることもあります。
売主さんに許可をもらうための一言は必ず欲しいですが、できる限り窓を開けて確認するようにしましょう。
・電気を消したときの明るさ
家に帰ってきた時や朝目が覚めた時、部屋の電気はついていません。
日中にリビングでゆっくりしている時間に電気をつけないこともあるでしょう。
売主さんに許可をもらって、電気を消したときの室内もぜひ見ておきましょう。
また、明るさを見るという点で、悪天候下での内覧も良いものです。
内覧向きの天気じゃないと言われることもありますが、実は「これ以上悪条件にはならない」状況で見ておくことは安心感を得るために大切だと思います。
・床のきしみやたわみ
マンションでも戸建てでも、フローリング材の異様な”たわみ”にはいくつかの原因があります。
季節による湿度の変化で木材が収縮することもあれば施工不良なこともありますし、少ないですが床下配管からの水漏れなど不具合が原因なこともあります。
重い家具を置いていた場所は凹んだりしますし、冷蔵庫の下は湿気によりカビが生えることもあります。
特にマンションではそこまで過敏にならなくてもよい場合がほとんですが、不自然な場所が凹んでいたり、大きなたわみがある場合は、ベースになっているパネルの破損や床下トラブルなど、何かしらの不具合がある可能性も捨てきれないので、「前にここに重たい家具とか置かれていましたか?」などと失礼にならない程度に質問するようにしています。
・24時間換気のフタ回りの壁紙
幹線道路に面したマンションなどでは、排ガスの臭いはしなくても24時間換気のフタ回りの壁紙が黒ずんでいたりします。
アレルギーや喘息持ちのご家族が住むのに向いているとは言えないでしょうから、敏感なご家族がいるようなら一つのバロメーターとしてチェックしてみましょう。
・バルコニーの手すりや物干し竿
これも同じく、排ガスがあるエリアだと外壁や物干し竿を触ると手にススが付きます。
売主さんに見えるところで触っていると「ケチをつけようとしてる」ように見えて印象が悪いので、私は見えないところでコッソリと触ります。。
近年では乾燥機付き洗濯機や浴室乾燥を使った室内干しが広く普及しているので、布団などを外で干さないようであればそこまでチェックしなくても大丈夫です。
・天井高
住戸の天井高は建築基準法で「最低2.1m」と定められています。
天井高が高い部屋は広く明るく見えることもあり、近年の新築や築浅のマンションでは天井高2.4m前後、高級マンションでは2.5m~が平均値とされています。
逆に築年数が経過しているマンションでは天井高が2.2m程度の住戸もあります。
住む人が満足すればそれでよいのですが、天井高は低いよりも高い方が人気がある=リセールバリューが高い、ということでもあるため、お客様に見えない場所で手を伸ばして測ったりします。
・戸棚の扉の傾きやドアノブの緩み、ガタ
売主様が居住中の物件を見学するとき、ドアノブを何度も開け閉めしたり戸棚の扉を細かくチェックしていると「細かそうなお客さん来たな…」と思われそうで気が引けるという方も多いです。
実際「面倒な買主」と思われてしまっては、交渉にも大いに影響が出ます。
なのでそこは仲介業者として、代わりにコッソリとチェックして小声でお伝えしたりします。
扉やドアノブの緩み、ガタつきなどは、ネジを締めたり丁番を交換すれば治ることがほとんどですが、中には土台部分から壊れていることもあるので無視はできません。
その場合でも軽微な補修で解決できるのですが、自分が見ていないところまで仲介業者が見てくれていると思ってもらえれば安心してもらえるかなと個人的に思っているので、実は見えないところでコソコソと動き回っています。
・給湯器とディスポーザーの交換時期
給湯器やディスポーザーのモーターは、だいたい10年が寿命と言われています。
これらは基本的に壊れてからの修理で大丈夫なのですが、2022年現在、コロナの影響もあり給湯器の納品が半年待ちなどというトンデモナイ状況になっているため、給湯器の最終交換日からもうすぐ10年ということであれば、予防的な交換も視野に入れたいところです。
ディスポーザーは動かなくても生活できますが、お湯が出ないのは困りますよね。
■まとめ
室内がどれだけ綺麗で素敵であっても、共用部の様子を見て購入を敬遠する人はとても多いです。
また、真剣なあまり細かく見過ぎると売主さんに悪印象を与えてしまうこともあるので、
仲介業者をうまく使ってください。
後悔しない購入のためには室内だけではなく共用部まで見ることが必要不可欠ですし、居住者としてもルールを守って生活をしていないと自分たちの資産の価値を下げることになりかねないことを自覚して暮らしたいものですね。
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